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目もくれない
「目もくれない〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
目もくれないの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
に両|肘《ひじ》を持たせたまま、ぼんやりと庭のほうを見やって、三人の挙動などには
目もくれないふうだった。垣根添《かきねぞ》いの木の間からは、種々な色の薔薇《ばら....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
、下手人いずこと捜しまわっているところでした。しかし、右門はそれらの面々なぞには
目もくれないで、ずいと座敷の中へ上がってまいりました。 「どなたでござる!」 ....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
いていでないので。しかし、名人はただ黙々。集まってきた小町美人のほうへはまったく
目もくれないで、何を待つのか、しきりと出入り口にばかり烱々《けいけい》と注意を放....
「俊寛」より 著者:菊池寛
って来てくれたのであるが、瞋恚の火に心を焦していた俊寛は、その久しぶりの珍味にも
目もくれないで、水夫の手から、それを地上に叩き落とした。むろん、今でも自分の小屋....
「太平洋魔城」より 著者:海野十三
床のうえに寝そべっていたリーロフ大佐が、むくむくとおき上った。そして司令官には、
目もくれないで、部屋を出ていこうとする。 「おい、リーロフ大佐。どこへいく」 「....
「美しい村」より 著者:堀辰雄
分の前ばかりを見ながら歩き出した。そんな気がした。私も私で、そんな野薔薇などには
目もくれない者のように、そっぽを向きながら歩いて行った。そうして私はすれちがいざ....
「灰色の記憶」より 著者:久坂葉子
何かの手であるように思えたから受けとらないで、大人も、私をひんまがった子だと自然
目もくれないようになった。それに、弟が派手な存在であったのだ。弟は母の容貌に似て....
「蠱惑」より 著者:豊島与志雄
は彼の世界が近くに迫っていた。 彼は扉をあけてつと入って来る。そして私の方へは
目もくれないで真直に四角い卓子の方へ歩いて行った。それからチョコレートをくれと女....
「街の少年」より 著者:豊島与志雄
すこしあるきだします。がまた、うなだれてじっとたちどまります。おおぜいの人々が、
目もくれないで通りすぎていきました。 酒によった四五人の水夫が通りかかりました....
「家なき子」より 著者:楠山正雄
いていた。わたしはかれらのそばへ寄って「おはよう」と言ったが、かれらはわたしには
目もくれないで、仕事を続けていた。 わたしは祖父のほうへ行ったが、かれはわたし....
「アラビヤンナイト」より 著者:菊池寛
じゅう、雷がごろごろ鳴りひびいているようでした。 そして朝になると、私たちには
目もくれないで、さっさと出かけて行きました。 すぐに、私どもは、よりあつまって....
「安吾の新日本地理」より 著者:坂口安吾
を探している文士ですが」 と名刺をだしても、まるで名刺に悪魔が宿っているように
目もくれないし、手をだそうともしなかった。甚しくおびえきった様子であった。私自身....
「あなたも私も」より 著者:久生十蘭
るが、たいへんな金持ちで、七年も前に死んだ夫人の追憶にひたりこみ、この世の女には
目もくれない変人、ということになっていた。 美術館のティ・ルームで見たときの第....
「無月物語」より 著者:久生十蘭
は破廉恥な愛欲に特別の嗜好を持っていた。すまし顔の女院や上※《じょうろう》などは
目もくれない。遊興はすべて下司《げす》張った、刺戟の強いほうが好ましい。醍醐《だ....
「はつ恋」より 著者:神西清
お追従に耳をかしたり、音楽を聴いたりしているけれど、その実お客の誰一人にだって、
目もくれないの。六つの大窓が、上から下まで、天井から床まで、すっかりあけ放たれて....