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真向い
「真向い〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
真向いの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「夫婦善哉」より 著者:織田作之助
レザー、ジャッキ、西洋剃刀など商売柄、銭湯帰りの客を当て込むのが第一と店も銭湯の
真向いに借りるだけの心くばりも柳吉はしたので、蝶子はしきりに感心し、開店の前日朋....
「灯台鬼」より 著者:大阪圭吉
一 わたし達の勤めている臨海試験所のちょうど
真向いに見える汐巻灯台の灯が、なんの音沙汰もなく突然吹き消すように消えてしまった....
「鶴は病みき」より 著者:岡本かの子
した病後の気持で、熱海の梅林が見度くなり、良人と、新橋駅から汽車に乗った。すると
真向いのシートからつと立ち上って「やあ!」と懐しげに声を掛けたのは麻川荘之介氏で....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
しい姿であった。わたしは暫く立っていたが、娘は容易に動きそうもなかった。 堂と
真向いの家はもう起きていた。家の軒には桑籠がたくさん積まれて、若い女房が蚕棚の前....
「みさごの鮨」より 著者:泉鏡花
乱々々する。 この時であった。 夜も既に、十一時すぎ、子の刻か。――柳を中に
真向いなる、門も鎖し、戸を閉めて、屋根も、軒も、霧の上に、苫掛けた大船のごとく静....
「革鞄の怪」より 著者:泉鏡花
の深く差俯向いて、眉も目も、房々した前髪に隠れながら、ほとんど、顔のように見えた
真向いの島田の鬢に包まれて、簪の穂に顕るる。……窈窕たるかな風采、花嫁を祝するに....
「アド・バルーン」より 著者:織田作之助
二三日前に笠屋町から|上ノ宮町の方へ移っていました。上宮中学の、蔵鷺庵という寺の
真向いの路地の二軒目。そして、そこにはもう玉子はいずに、茂子という女が新しい母親....
「高原の太陽」より 著者:岡本かの子
慄えに全身をひきしめられた。 「ね、あそこをご覧なさい」 青年の指差したのは、
真向いの堤に恰も黄金の滝のように咲き枝垂れている八重山吹の花むらであった。陽は午....
「春」より 著者:岡本かの子
ですね、あなたは。 若い医員は、得意そうににやにや笑いながら入って来た男患者を
真向いの椅子に坐らせて訊いた。 ――はあい…………。 狂患者に馴れた若い医員も....
「ドーヴィル物語」より 著者:岡本かの子
知ってる。 五百フランのテーブルにイベットが居た。「親元」に立って居る老紳士の
真向いのテーブルに女王のような取り済し方で臨んで居る。彼女は顔に非常に似合う好い....
「米」より 著者:犬田卯
へかえると、由次が一人で泥上げをしていた。陽はいつか傾いてしまって、掘割を隔てた
真向いの丘のかげが濃く沼岸の方へ伸びている。由次は鋤簾は重そうに投げ込み、肩に力....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
、ほ。」 「怪しからん、――向う側へ。」 と、あとへ退って、南面に、不忍の池を
真向いに、高欄の縁下に添って通ると、欄干の高さに、御堂の光明が遠くなり、樹の根、....
「磯部の若葉」より 著者:岡本綺堂
たらしい姿であった。私は少時立っていたが、娘は容易に動きそうもなかった。 堂と
真向いの家はもう起きていた。家の軒下には桑籠が沢山に積まれて、若い女房が蚕棚の前....
「火夫」より 著者:カフカフランツ
降りていき、しっかと抱き合ったままボートに入った。上院議員はカルルのために自分の
真向いにいい席を探し出した。上院議員の合図で水夫たちは本船からボートを突き離し、....
「呼ばれし乙女」より 著者:岡本かの子
姿ともうけとれる―― 湖は暮れて来た。湖面の夕紫は、堂ヶ島を根元から染めあげ、
真向いの箒ヶ崎は洞のように黝んだ。大きな女中と、小さい女中が、 「暫らく停電いた....