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瞼
「瞼〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
瞼の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「母」より 著者:芥川竜之介
痴《ぐち》はこぼすまい。もう涙は見せない事にしよう。もう、――」
男はちょいと
瞼《まぶた》を挙げた。
「それとも何かあの事以外に、悲しい事でもあるのかい? た....
「路上」より 著者:芥川竜之介
いるように見えた。それは白い――と云うよりもむしろ蒼白い顔の色に、ふさわしい二重
瞼《ふたえまぶた》だった。着物は――黒い絹の地へ水仙《すいせん》めいた花を疎《ま....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
した。が、空腹を充すべき木《こ》の実《み》は、どこにでも沢山あった。
日の暮は
瞼《けわ》しい崖《がけ》の上に、寂しそうな彼を見出した。森はその崖の下にも、針葉....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
は》げ上《あが》った額から左の半面にかけて火傷《やけど》の跡がてらてらと光り、下
瞼《したまぶた》が赤くべっかんこをしていた。そして唇《くちびる》が紙のように薄か....
「小さき者へ」より 著者:有島武郎
最後と思わしい激しい陣痛が起った。肉の眼で恐ろしい夢でも見るように、産婦はかっと
瞼《まぶた》を開いて、あてどもなく一所《ひとところ》を睨《にら》みながら、苦しげ....
「星座」より 著者:有島武郎
飲めないもの」
酌をしながら、美しい眼が下向きに、滴り落ちる酒にそそがれて、上
瞼の長い睫毛《まつげ》のやや上反りになったのが、黒い瞳のほほ笑みを隠した。やや荒....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
耳にはいったりはいらなかったりする。君の心はただいちずに、眠り足りない人が思わず
瞼をふさぐように、崖の底を目がけてまろび落ちようとする。あぶない‥‥あぶない‥‥....
「かんかん虫」より 著者:有島武郎
な総て空なり」って諺があるだろう。旨めえ事を云いやがったもんだ。己れや其の晩妙に
瞼が合わ無えで、頭ばかりがんがんとほてって来るんだ。何の事は無え暗闇と睨めっくら....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
ょっと載せたが、丸髷をがっくりさした、色の白い、歯を染めた中年増。この途端に颯と
瞼を赤うしたが、竈の前を横ッちょに、かたかたと下駄の音で、亭主の膝を斜交いに、帳....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
るぶる……私あ、頭と嘴を一所に振った。旦那の前だが、……指を曲げて、口を押えて、
瞼へ指の環を当がって、もう一度頭を掉った。それ、鍵の手は、内証で遣っても、たちま....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
、ぽっとりした……生際はちっと薄いが、桃色の手柄の丸髷で、何だか、はれぼったい、
瞼をほんのりと、ほかほかする小春日の日当りに表を張って、客欲しそうに坐っているか....
「橋」より 著者:池谷信三郎
の無数の断面に七色の虹を描きだして、彼女はうっとりと見入っていた。 彼女の一重
瞼をこんなに気高いと思ったことはない。彼女の襟足をこんなに白いと感じたことはない....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
められたようによろめいたが、衣裄に手をかけ、四辺を※し、向うの押入をじっと見る、
瞼に颯と薄紅梅。 九 煙草盆、枕、火鉢、座蒲団も五六枚。 (これ....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
ためす為に片手に右の目を塞いで見た。左の目は果して何ともなかった。しかし右の目の
瞼の裏には歯車が幾つもまわっていた。僕は右側のビルディングの次第に消えてしまうの....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
って、娘が覗くように、千代紙で招くのは、菜の花に交る紫雲英である。…… 少年の
瞼は颯と血を潮した。 袖さえ軽い羽かと思う、蝶に憑かれたようになって、垣の破目....