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「知らず顔〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

知らず顔の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
根岸お行の松 因果塚の由来」より 著者:三遊亭円朝
もよく知っているから、今までは他の人達が何《なん》のかのと言って意見しているのを知らず顔でいたんだがね、今日のように内所《ないしょ》で折檻されるを何うも見てはい....
一九三二年の春」より 著者:宮本百合子
らないものは仕方がありませんよ」 「――知らないかナ。蔵原ですよ」 わたしは我知らず顔を近づけ、さらに手にとりあげてその写真を見た。洋服姿の古い写真をいつか見....
加護」より 著者:宮本百合子
まいになるのですよ、けれども――」 お幾は急に心を横切った或る内密な喜びで、我知らず顔中を輝かせた。 「若しあなたがそうお思いなさるのなら、心のすむようになさ....
灰燼十万巻」より 著者:内田魯庵
儒の大著、人間の貴い脳漿を迸ばらした十万巻の書冊が一片業火に亡びて焦土となったを知らず顔に、渠等はバッカスの祭りの祝酒に酔うが如くに笑い興じていた。 重役の二....
時事雑感」より 著者:寺田寅彦
眼下に波立っている。七年前のすさまじい焼け野原も「百年後」の恐ろしい破壊の荒野も知らず顔に、昭和五年の今日の夜の都を享楽しているのであった。 五月にはいってか....
天馬」より 著者:金史良
さすがの女流詩人も彼が臆面もなく行って来たというその意味がやっと分ったとみえわれ知らず顔を火照《ほて》らしたが、それでも自分の気づまりな様子をみせては安っぽく見....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
りながら、 「今日は島田に結んで上げましょう」 「まあ――」 お雪ちゃんは、我知らず顔が真赤になりました。 「お雪さん、あなたは島田よりか桃割《ももわれ》が似....
源氏物語」より 著者:紫式部
いがけぬ穢れにあいましたと申し上げてください。こんなので今日は失礼します」 素知らず顔には言っていても、心にはまた愛人の死が浮かんできて、源氏は気分も非常に悪....
源氏物語」より 著者:紫式部
にその気があればと宮が心でお思いになる衛門督は猫ほどにも心を惹かぬのかまったくの知らず顔であった。左大将の前夫人は今も病的な、陰気な暮らしを続けて、若い貴女のた....
樋口一葉」より 著者:長谷川時雨
人げなき折々はそのことゝもなく打かすめてものいひかけられしことも有《あり》しが、知らず顔につれなうのみもてなしつるなり。さるを今しもかう無き名など世にうたはれて....
P丘の殺人事件」より 著者:松本泰
殺人事件はそれで終りを告げた。コルトンの死骸の横っていた共同椅子の辺には、青草が知らず顔に萋々《せいせい》と伸びている。倫敦は軈て芳香《かおり》高い薔薇の咲く頃....
明治劇談 ランプの下にて」より 著者:岡本綺堂
鋒が余りするどいので、末松子も沈黙してしまった。一座もやや白けかかったが、それを知らず顔に頬杖をついているのは尾崎紅葉氏一人であった。下戸の紅葉氏は酒の酔いも手....
炭焼長者譚」より 著者:喜田貞吉
間より立ちのぼりたる煙の有様、世にたぐひなきは炭竈の風情なり」などと、人の苦労も知らず顔に床しがったものであったのである。炭竈に立ち上るかすかな煙は、藻汐焼く火....
五重塔」より 著者:幸田露伴
たりして気が気ではなく心配して居らるるに、一体ならば迎いなど受けずともこの天変を知らず顔では済まぬ汝が出ても来ぬとはあんまりな大勇、汝のお蔭で険難な使いをいいつ....
快走」より 著者:岡本かの子
にも止めない振りで答えた。 「いいとも、ゆっくり行ってらっしゃい」 道子はわれ知らず顔をほころばした。こんなことってあるかしらん――道子は夢のような気がした。....