秋霧[語句情報] » 秋霧

「秋霧〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

秋霧の前後の文節・文章を表示しています。該当する11件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
たら、富士は見えても、如何に浅薄の景色になってしまったであろう。春雨の明けの朝、秋霧の夕、此杉の森の梢がミレージの様に靄から浮いて出たり、棚引く煙を紗の帯の如く....
一つの芽生」より 著者:宮本百合子
あの響を想起したとき、私は命の、あまりの麗《うる》わしさに心を撃たれた。 淡い秋霧に包まれた桐や棕櫚《しゅろ》が、閉めた窓々を透して流れ出る灯に、柔かな輪郭《....
源氏物語」より 著者:紫式部
寂しい御起居は想像いたしながら、お尋ねすることもまた御遠慮されたのでございます。秋霧に立ちおくれぬと聞きしより時雨《しぐ》るる空もいかがとぞ思ふ とだけであ....
源氏物語」より 著者:紫式部
であるのを見て、大姫君がまたつつましいふうで自身で言った。 雲のゐる峰のかけぢを秋霧のいとど隔つる頃にもあるかな そのあとで歎息するらしい息づかいの聞こえるの....
源氏物語」より 著者:紫式部
従者が告げて来たために、外をながめていた所から立ち上がった時に雁が啼いて通った。秋霧の晴れぬ雲井にいとどしくこの世をかりと言ひ知らすらん 薫の歌である。 兵....
万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
苦しんでおるのでございます、というのであろう。 「霧らふ朝霞」は、朝かかっている秋霧のことだが、当時は、霞といっている。キラフ・アサガスミという語はやはり重厚で....
秋霧」より 著者:宮本百合子
一面、かなり深い秋霧が降りて水を流した様なゆるい傾斜のトタン屋根に星がまたたく。 隣の家の塀内....
わかれ」より 著者:国木田独歩
常なれど、今日は雲のゆきき早く空と地と一つになりしようにて森も林もおぼろにかすみ秋霧重く立ちこむる野面に立つ案山子の姿もあわれにいずこともなく響く銃の音沈みて聞....
家なき子」より 著者:楠山正雄
みを、また経験したことがあった。 大洋の中にいると同様に、わたしたちの日は遠い秋霧の中に消えている地平線まで届いていた。ひたすら広漠と単調が広がっている灰色の....
中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
はるゝ日の影 秋の夕日 真萩ちる庭の秋風身にしみて夕日の影ぞかべに消えゆく秋霧の雁 村雲によこぎる雁の数見えて朝日にきゆる峯の秋霧 ....
私本太平記」より 著者:吉川英治
秋で、五十二。まだまだ老衰のお年ではなかった。「正統記」によると、 月の初めより秋霧に冒され給うて―― とあれば、おそらくは、お風邪が昂じられた程度ではなかっ....