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空ろ
「空ろ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
空ろの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「闖入者」より 著者:大阪圭吉
っていた。血色は優れず、両の眼玉は、あり得べからざるものの姿でも見た人のように、
空ろに見開かれて、食器をとる手は、内心の亢奮を包み切れずか絶えず小刻に顫えていた....
「故郷を想う」より 著者:金史良
ある。その姉が今度帰ればもういないのだと思うと、丈夫な歯が抜けたように心の一隅が
空ろである。 それでもやはり故郷への帰心は抑え難くはげしい。これは一体どうした....
「宇宙爆撃」より 著者:蘭郁二郎
で行って貰いたいっていってたからね、所長が―、はっは」 木曾ははじめて、しかし
空ろな声で笑って見せた。 二 「でも、ボルネオとはまさか私――。ど....
「獏鸚」より 著者:海野十三
そうだが、どこかへ隠れてしまったよ。はっはっ、なっちゃいない、全く」 名刑事は
空ろな笑い声をあげて、自らを嘲笑した。私は老刑事の心中を思いやって眼頭が熱くなる....
「不思議なる空間断層」より 著者:海野十三
薄気味わるく感ずることもあるのだ。(乃公は夢で、同じ町を幾度となく見る)と、彼は
空ろな眼をギロリと動かしていうのであった。(……ああ、いつか来た町へまた出たよ、....
「認識論とは何か」より 著者:戸坂潤
ているからである。虚偽や虚栄は、何が空虚なのかと云えば、意識の自己確実性=良心の
空ろのことだから、して見ると誤謬も決して消極的なものではない。誤謬は誤差というよ....
「カラマゾフの兄弟」より 著者:ドストエフスキーフィヨードル・ミハイロヴィチ
ってる』とでもいうような眼つきをしてるな。幻影を信じちゃいかんよ。
偽り多く
空ろなる人を信ぜず、
おのが疑惑を忘じたまえ……
おれは酔っ払っちゃいない....
「火の扉」より 著者:岸田国士
もつていた。 だれもかれも、たゞなんとなく、アハヽヽヽと笑つた。 その笑いの
空ろさが、北原ミユキを、もういたゝまらぬ気持にさせた。 彼女は、その場を離れる....
「魔都」より 著者:久生十蘭
でガッカリしてしまった。やや長い間、痴呆のようにトホンと椅子に掛け、何ともつかぬ
空ろな視線を漂わしていたが、やがて取るともなく卓上の夕刊を取上げて眺めやると、二....
「小説 円朝」より 著者:正岡容
…」 気配に、師匠が目を開けた。昔ギロリと睨まれたあの目とは打って変った寂しい
空ろのものだった。 「ア、師匠」 思わず圓朝は声を掛けた。 「……」 しばし....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
想って、私は全身、かッとほてりました。」 ここに聞くものは悚然とした。 「中は
空ろで、きれ仕立ですから、瓜の合せ目は直ぐ分りました。が、これは封のあるも同然。....
「押しかけ女房」より 著者:伊藤永之介
のアセチレン燈の光が、かすかにとどく銀杏の根もとに、初世は一人仲間からはぐれて、
空ろな顔で突ツ立つていた。 「おい、帰ろう――あいつらはもう、どこに行つたかわか....
「宮本武蔵」より 著者:吉川英治
………」 「わたしを」 「…………」 「わたしを」 手応えのない相手の無表情な
空ろへ向って、彼女の押詰めて来た切実な気持は不意なよろめきを感じた。傷だらけにな....
「三国志」より 著者:吉川英治
ず死んだろう」 人々は急に息をひそめた。敵ながらその人|亡しと聞くと何か大きな
空ろを抱かせられたのである。仲達もまさにその一人だったが、老来いよいよ健なるその....
「はつ恋」より 著者:神西清
思いっきり声を引き引きがなり立てて、韻が入れかわり立ちかわり、まるで小鈴のような
空ろで騒々しい音を立てたけれど、わたしはじっとジナイーダの顔を見たまま、彼女がつ....