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紛らす
「紛らす〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
紛らすの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「玄鶴山房」より 著者:芥川竜之介
にも残っていたたった一つの慰めだった。彼は心身に食いこんで来るいろいろの苦しみを
紛らす為に楽しい記憶を思い起そうとした。けれども彼の一生は前にも言ったように浅ま....
「或る女」より 著者:有島武郎
。……定子……葉子はもうその笞《しもと》には堪えないというように頭を振って、気を
紛らすために目を開いて、とめどなく動く波の戯れを見ようとしたが、一目見るやぐらぐ....
「野菊の墓」より 著者:伊藤左千夫
れた。お互に気のない風はしていても、手にせわしい仕事のあるばかりに、とにかく思い
紛らすことが出来た。 十五日と十六日とは、食事の外用事もないままに、書室へ籠《....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
言いながら、果敢ないお蔦の姿につけ、情にもろく崩折れつつ、お妙を中に面を背けて、
紛らす煙草の煙も無かった。 小芳の心中、ともかくも、お蔦の頼み少ない風情は、お....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
悪かった悪かった、『市長さん』騒がして済まなかったネ。はッはッはッ」 と笑いに
紛らす声がした。 「隠して置いたというのに、連れてゆかないというのかい」 その....
「鶴は病みき」より 著者:岡本かの子
めて堪えて居た。赫子は、云うだけは云ったが、折角の計劃が無になったいまいましさを
紛らす為めか傍若無人にたてつづけの鼻唄。麻川氏は私と同じ無言で、しかし、何かしき....
「河明り」より 著者:岡本かの子
庭へ移した。蔵の中の南洋風の作り庭の小亭で私達は一休みした。 私は手持不沙汰を
紛らすための意味だけに、そこの棕櫚の葉かげに咲いている熱帯生の蔓草の花を覗いて指....
「雛妓」より 著者:岡本かの子
いかの子さんでも聘んで元気づけに君に見せてやるか」 逸作は人生の寂しさを努めて
紛らすために何か飄逸な筆つきを使う画家であった。都会児の洗練透徹した機智は生れ付....
「夜叉ヶ池」より 著者:泉鏡花
…ばかりじゃ無い、……雁、燕の行きかえり、軒なり、空なり、行交う目を、ちょっとは
紛らす事もあろうと、昼間は白髪の仮髪を被る。 学円 (黙然として顔を見る。) 晃....
「棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
の弱い人間であって、悲哀に対して正面から衝突してゆく勇気がないために、その悲哀を
紛らすための妥協的代償を他に求めたがるのに外ならなかった。 杜は夢から夢を見た....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
へはいることは僕には死ぬことに変らなかった。僕はさんざんためらった後、この恐怖を
紛らす為に「罪と罰」を読みはじめた。しかし偶然開いた頁は「カラマゾフ兄弟」の一節....
「高原の太陽」より 著者:岡本かの子
楽も青年の魂を慰めなかった。年少から酒を嗜むようになったのも、その空虚な気持ちを
紛らすためと云ってよかった。 「だが不思議ですね。それほど女性の陰に悩まされた自....
「二葉亭四迷」より 著者:内田魯庵
るよりはこの不満をドウスル事も出来ないのが毎日の堪えざる苦痛であって、この苦痛を
紛らすための方法を求めるに常に焦って悶えていた。文学もかつてその排悶手段の一つで....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
ないほどのウツケではないが、そんな空言を叩いて拠ろなしの文学三昧に送る不愉快さを
紛らすための空気焔を吐いたのであろう。 明治四十一年の春、ダンチェンコが来遊し....
「扉の彼方へ」より 著者:岡本かの子
の宿の食事はどうかね」という言葉とがかち合いました。良人も実は何か考えていたのを
紛らすためにいった言葉らしい声音でした。 二人はただ微笑して、強いて返事を訊く....