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「絃歌〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

絃歌の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
身投げ救助業」より 著者:菊池寛
植えられて、夜は蒼いガスの光が煙《けむ》っている。先斗町《ぽんとちょう》あたりの絃歌の声が、鴨川を渡ってきこえてくる。後には東山が静かに横たわっている。雨の降っ....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
その青い影は家々のあかるい灯のまえに緩くなびいていた。その白い花は家々の騒がしい絃歌に追い立てられるようにあわただしく散っていた。三人は青い影を縫い、白い花を浴....
鰊漁場」より 著者:島木健作
。彼の指さした方向には、居酒屋、小料理屋のたぐいが軒をならべてならんでい、野卑な絃歌がさんざめいていた。漁夫たちがそこへはいって行くうしろすがたが見えた。山本は....
鍵から抜け出した女」より 著者:海野十三
へ入っていった。 夜の街は、沸きかえるような賑かさだった。両側の飲食店からは、絃歌の音がさんざめき、それに交って、どこの露地からも、異国情調の濃い胡弓の音や騒....
雛妓」より 著者:岡本かの子
ようである。それに引代え廊下を歩く女中の足音は忙しくなり、二つ三つ隔てた座敷から絃歌の音も聞え出した。料亭持前の不夜の営みはこれから浮き上りかけて来たようである....
貧を記す」より 著者:堺利彦
をかくしぬ。しこうして今や秋風吹かんとす。 一五夜 一五夜、月を見ず。絃歌盛んに響く九階の辺、かんしゃく起こりてたまらず。実にわがままなるものなり。わ....
田舎教師」より 著者:田山花袋
並べた二階家の屋根がくっきりと黒く月の光の中に出ている。 水を越して響いて来る絃歌の音が清三の胸をそぞろに波だたせた。 乗り合いの人の顔はみな月に白く見えた....
縮図」より 著者:徳田秋声
たが、そういう機会はこれまでにもなかったわけではなく、本当に考える気なら、それが絃歌の巷でも少しも差し閊えないはずだと思われた。 しばらくお茶を呑んで休んでか....
不尽の高根」より 著者:小島烏水
ているから、下の座敷からは、一投足の労で、口をそそぎ手が洗える。どこかの家から、絃歌の声が水面を渡って、宇治川のお茶屋にでも、遊んでいるような気がする。恐らく富....
東上記」より 著者:寺田寅彦
て此方を見る老人のあればきっと中風よとはよき見立てと竹村はやせば皆々笑う。新地の絃歌聞えぬが嬉しくて丸山台まで行けば小蒸汽一|艘後より追越して行きぬ。 昔の大....
電車と風呂」より 著者:寺田寅彦
もらしく聞える。何とかいう芝居で鋳掛屋の松という男が、両国橋の上から河上を流れる絃歌の声を聞いて翻然大悟しその場から盗賊に転業したという話があるくらいだから、昔....
大正女流俳句の近代的特色」より 著者:杉田久女
と当惑とを、須可捨焉乎という言葉で現わしているのは甘いと思う。 寒風に葱ぬく我に絃歌やめ 久女 向うの料亭からは賑かな絃歌のさざめきが遊蕩気分を漲らしてく....
競漕」より 著者:久米正雄
にしてしまった。十二時過ぎたので彼も床に入った。先刻までかなり騒がしかった四隣の絃歌も絶えて、どこか近く隅田川辺の工場の笛らしいのが響いて来る。思いなしか耳を澄....
諦めている子供たち」より 著者:坂口安吾
れてしまう風土の特色と、も一つ新潟は生えぬきの港町で色町だった。つまり遊ぶ町だ。絃歌のさざめきを古来イノチにしていたような町だ。だから「新潟には男の子と杉の木は....
京鹿子娘道成寺」より 著者:酒井嘉七
いまして、裏は細い通りになっております。――つまり、猿若町の裏通と、夜ともなれば絃歌さんざめく囃子町の裏通とが、背を合している、人通も、あまりない程な、細い裏道....