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「縫糸〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

縫糸の前後の文節・文章を表示しています。該当する10件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
虞美人草」より 著者:夏目漱石
はない。出ようと思う間《ま》に、立てかけた膝《ひざ》をおろして、一針でも二針でも縫糸が先へ出るが常である。重たき琵琶《びわ》の抱《だ》き心地と云う永い昼が、永き....
自叙伝」より 著者:大杉栄
、多少演説口調で言った。 「それや面白そうですな。」 士官学校の馬術の教官で、縫糸を一本手綱にしただけで自由に馬を走らせるという馬術の名手の高橋大尉は、本当に....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
え、郁太郎の?」 愕然《がくぜん》として暗い行燈《あんどん》の下を見ると、女は縫糸の一端を糸切歯で噛みながら、竜之助の面《おもて》を流し目に見て笑っています。....
原爆回想」より 著者:原民喜
ファミン剤、オートミイルの缶入、炒米、万年筆、小刀、鉛筆、手帳、夏シャツ、手拭、縫糸、針、ちり紙、煙草、マッチ、郵便貯金通帳、ハガキ、印鑑 これだけが、うまく....
夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
の生涯の上にも見たのである。 「おれの生涯は敏慧で親切で寛容な夫人の優雅な言葉を縫糸にしてはじめて仕立てられた一領の衣である。おれにはそう思われて仕方がない。清....
サガレンと八月」より 著者:宮沢賢治
孔石《あないし》をひろって来るよ。」とタネリが云《い》いましたらおっかさんは太い縫糸《ぬいいと》を歯《は》でぷつっと切ってそのきれはしをぺっと吐《は》いて云いま....
作画について」より 著者:上村松園
でそう言われて、つと障子の傍らまでいざり寄られ、針を眼の高さまで挙げ、右の手には縫糸の先を持たれたままの格好で、片方の眼をほそく細く閉じられて、じっと針の目を通....
小伜の釣り」より 著者:佐藤垢石
や川へ行くようになった。裏の薮から、篠笹を切ってきて、それに母の裁縫道具の中から縫糸を持ち出して道糸をこしらえては、鈎を結んで出て行った。夕方帰ってくると、広い....
夢幻泡影」より 著者:外村繁
男の生れた阿佐ヶ谷の家。 防空演習の、警報のバケツ叩いていた妻の姿、針の日に、縫糸通しかねていた妻の姿、破れ財布を、インフレ札で脹らませて、走り廻っていた妻の....
後の日の童子」より 著者:室生犀星
黙って対い合っていた。――そして馬陸は、靴針のように童子の足跡を辿って、幾重にも縫糸をかがって倦くことを知らなかった。 笏は、夕刻にはそのふしぎな暗い森の中の....