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繁く
「繁く〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
繁くの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
れて、雲のひだ染みに蔽いかかる、桟敷裏とも思う町を、影法師のごとくようやく人脚の
繁くなるのに気を取られていた、松崎は、また目を舞台に引附けられた。 舞台を見返....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
い。けれども、雨漏にも旅馴れた僧は、押黙って小止を待とうと思ったが、ますます雫は
繁くなって、掻巻の裾あたりは、びしょびしょ、刎上って繁吹が立ちそう。 屋根で、....
「化鳥」より 著者:泉鏡花
そうにもない。 五 また顔を出して窓から川を見た。さっきは雨脚が
繁くって、まるで、薄墨で刷いたよう、堤防だの、石垣だの、蛇籠だの、中洲に草の生え....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
裏町から出て、その日、日本橋で鉄道馬車に乗って上野で下りたが、山下、坂本通は人足
繁く、日蔭はなし、停車場居廻の車夫の目も煩いので、根岸へ行くのに道を黒門に取って....
「神鷺之巻」より 著者:泉鏡花
ような旅館がない。片原の町へ宿を取って、鳥博士は、夏から秋へかけて、その時々。足
繁くなると、ほとんど毎日のように、明神の森へ通ったが、思う壺の巣が見出せない。 ....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
。みな表町なる大通の富有の家に飼われしなりき。夕越くれば一斉に塒に帰る。やや人足
繁く、戸外を往来うが皆あおぎて見つ。楓にはいろいろのもの結ばれたり。 そのまま....
「眉かくしの霊」より 著者:泉鏡花
り直すと、そのままごそごそと樹を潜って廂に隠れる。 帳場は遠し、あとは雪がやや
繁くなった。 同時に、さらさらさらさらと水の音が響いて聞こえる。「――また誰か....
「三人の双生児」より 著者:海野十三
ってしまった。しかし赤沢の伯父のことは、何で忘れよう。いつもその伯父は、わが家へ
繁く来たではないか。貞雄――という名にも、なるほどそういわれると覚えがあった。伯....
「古事記」より 著者:太安万侶
もとには繁つた竹が生え、 末の方にはしつかりした竹が生え、 その繁つた竹のように
繁くも寢ず しつかりした竹のようにしかとも寢ず 後にも寢ようと思う心づくしの妻は....
「河明り」より 著者:岡本かの子
は堪らなく娘がいじらしくなった。日はあかあかと照り出して、河の上は漸く船の往来も
繁くなった。 「あんまりこんな所に引込んでいると、なお気が腐りますからね。きょう....
「扉の彼方へ」より 著者:岡本かの子
青年でした。官立大学で経済を学んでいたために、父亡き後の母は、この遠縁に当って足
繁く自家へ出入する青年を、何かと相談相手にして、いわば私との恋仲も黙許よりも、寧....
「籠釣瓶」より 著者:岡本綺堂
、彼もそのままに口をつぐんでしまった。あかりがついて、夜の町に師走の人の往き来が
繁くなると、次郎左衛門は果たして駕籠を呼べと言い出した。しょせん止めても止まらな....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
彼を愛すること甚だ深い。 炎天の日盛りに、彼を見るのもいいが、秋の露がようやく
繁く、こおろぎの声がいよいよ多くなる時、花もますますその色を増して、明るい日光の....
「玉藻の前」より 著者:岡本綺堂
をたたずませて置いて、彼は人家のある方へ小走りに急いで行った。雨の糸はだんだんに
繁くなって、彼の踏んでゆく白い石の色も変わってきた。玉藻は薄い被衣《かつぎ》を深....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
ていたが、海端《うみばた》の朝は早く明けて、東海道の入口に往来の人影もだんだんに
繁くなる頃まで、庄五郎も来ない、平七もみえないので、藤次郎も不思議に思った。病気....