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「繁り〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

繁りの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
カインの末裔」より 著者:有島武郎
はその突角《とっかく》まで行ってまた立停った。遙か下の方からは、うざうざするほど繁り合った濶葉樹林《かつようじゅりん》に風の這入《はい》る音の外《ほか》に、シリ....
ゆず湯」より 著者:岡本綺堂
物置と四、五坪の狭い庭があって、庭には柿や桃や八つ手のたぐいが押しかぶさるように繁り合っていた。いずれも庭不相当の大木であった。二階はどうなっているか知らないが....
地球発狂事件」より 著者:海野十三
ないかもしれない」 「ですが、火星は、わが地球に一番よく似ていて、そこには植物が繁り生物が棲息していることは前からいわれていたではありませんか。ですから、地球の....
春の潮」より 著者:伊藤左千夫
春が早い。人の見る所にも見ない所にも梅は盛りである。菜の花も咲きかけ、麦の青みも繁りかけてきた、この頃の天気続き、毎日|長閑な日和である。森をもって分つ村々、色....
紅黄録」より 著者:伊藤左千夫
頭をそろえて向き直った。もう家へは二、三丁だ。背の高い珊瑚樹の生垣の外は、桑畑が繁りきって、背戸の木戸口も見えないほどである。西手な畑には、とうもろこしの穂が立....
耽溺」より 著者:岩野泡鳴
で、二階はこの一室よりほかになかった。隣りの料理屋の地面から、丈の高いいちじくが繁り立って、僕の二階の家根を上までも越している。いちじくの青い広葉はもろそうなも....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
物置と四、五坪の狭い庭があって、庭には柿や桃や八つ手のたぐいが押しかぶさるように繁り合っていた。いずれも庭不相当の大木であった。二階はどうなっているか知らないが....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
観だった。空のどこかに月があると見えて、薄っすらした光が、展望塔や城壁や、それを繁り覆うているかのように見える、闊葉樹の樹々に降り注ぎ、まるで眼前一帯が海の底の....
春昼」より 著者:泉鏡花
見晴しへ出ますばかり、あとは生繁って真暗で、今時は、さまでにもありませぬが、草が繁りますと、分けずには通られません。 谷には鶯、峰には目白四十雀の囀っている処....
死者の書」より 著者:折口信夫
ぎるのがあわれである。 もう此頃になると、山は厭わしいほど緑に埋れ、谷は深々と、繁りに隠されてしまう。郭公は早く鳴き嗄らし、時鳥が替って、日も夜も鳴く。 草の花....
照葉狂言」より 著者:泉鏡花
は西の方に路程一里半隔りたり。山は近く、二階なる東の窓に、かの木戸の際なる青楓の繁りたるに蔽われて、峰の松のみ見えたり。欄に倚りて伸上れば半腹なる尼の庵も見ゆ。....
阿Q正伝」より 著者:井上紅梅
が落ちた。阿Qは顫える足を踏みしめて桑の樹に攀じ昇り、畑中へ飛び下りると、そこは繁りに繁っていたが、老酒も饅頭も食べられそうなものは一つもない。西の垣根の方は竹....
死剣と生縄」より 著者:江見水蔭
。 五間六間は何んでもなかったが、十間十四五間と進むに連れて、思ったよりも藻の繁りは多かった。手に搦み、足に搦み、それは恐るべき魔力の有るのに驚かされた。藻に....
壁の眼の怪」より 著者:江見水蔭
と出て来たのは、筋骨|逞ましい村の若者であった。それは怪獣のような鋭い眼をして、繁りの青萱の中を睨みつめた。 執念の毒蛇の首は、未だ鈴手綱の端を咬んだまま、と....
エリザベスとエセックス」より 著者:片岡鉄兵
は、なんとなく侍史に、気ばかりの騎士道以上のもので繋がれた自分を感じた。――その繁りを結びつけるものは、たんまりもらった感謝の情であった。 セシルがフランスに....