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纔か
「纔か〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
纔かの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「夢の如く出現した彼」より 著者:青柳喜兵衛
い続けているのみである。 ここに十巻の全集が世に贈られることは癒されざる慰めの
纔かな慰めである。....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
袂が揺れた。浦子は涙の声の下、 「先生、」と幽にいう。 「はあ、はあ、」 と、
纔かに便を得たらしく、我を忘れて擦り寄った。 「私、私は、もう死んでしまいたいの....
「海の使者」より 著者:泉鏡花
も一つ、――以前の橋とは間十|間とは隔たらぬに、また橋を渡してある。これはまた、
纔かに板を持って来て、投げたにすぎぬ。池のつづまる、この板を置いた切れ口は、もの....
「星あかり」より 著者:泉鏡花
のに足を打たれて、気も上ずって蹌踉けかかった。手が、砂地に引上げてある難破船の、
纔かにその形を留めて居る、三十|石積と見覚えのある、その舷にかかって、五寸釘をヒ....
「中国怪奇小説集」より 著者:岡本綺堂
、同業者と共に海浜へ出て網を入れると、その重いこと平常に倍し、数人の力をあわせて
纔かに引き上げることが出来た。見ると、網のなかに一尾の魚もない。ただ六、七人の小....
「死者の書」より 著者:折口信夫
と、更に堅い巌が、掌に触れた。脚をひろげると、もっと広い磐石の面が、感じられた。
纔かにさす薄光りも、黒い巌石が皆吸いとったように、岩窟の中に見えるものはなかった....
「瘠我慢の説」より 著者:木村芥舟
さざりしに、児竊かにこれを携え先生の許に至り懇願せしかば、先生|速に肯諾せられ、
纔か一日にして左のごとくの高序を賜わりたるは、実に予の望外なり。 木村芥舟先生....
「幽霊塔」より 著者:黒岩涙香
権田「イヤ先ア、そう遽て成さるな、決して知り乍ら故と証明せずに居た訳では無い、
纔かに此の頃に至って其の証拠を得たのです、尤も私は秀子の件イヤ輪田夏子の件を弁護....
「ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
この神聖な場所を籠めてくれる、
優しい、薄暗い黄昏時よ。好く来てくれた。
渇して
纔かに吸う希望の露に命を繋いでいる、
優しい恋の艱よ。己の胸を占めてくれい。
静....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
層許りの段を為している、それから下は谷底まで七、八丈の絶壁である。壁面の上部には
纔かの罅隙を覓めて根を托した禾本科らしい植物の葉が、女の髪の毛を梳いたように房さ....
「都会地図の膨脹」より 著者:佐左木俊郎
った。時折に、荷車を曳いて人糞をあげに行くだけが、以前に自分の住んでいた部落との
纔かな繋がりであった。 併し又それが、以前の小作人仲間と自分との気持を、
纔かな....
「塩原多助一代記」より 著者:三遊亭円朝
金を貯め、国へ帰って来て又家を立る工夫もあるべいと思い、辛えのを忍び国を出る時に
纔かに六百の銭を持って来たが、途中で悪者に出遇い、難行苦行して漸く江戸へ着いた所....
「学究生活五十年」より 著者:津田左右吉
東京帝大の文学部の名で研究報告を続刊し、その出版費を会社から提供する、という形で
纔かにその生命をつなぐことができた。それでぼくも毎年その報告に何かの論文を載せる....
「雁」より 著者:森鴎外
した挙句、横着と云っても好いような自覚に到達して、世間の女が多くの男に触れた後に
纔かに贏ち得る冷静な心と同じような心になった。この心に翻弄せられるのを、末造は愉....
「痀女抄録」より 著者:矢田津世子
。 背を引け目にするどころか、てんで頓着しているふうも見えない。ここに、母親の
纔かな安堵があった。いつも、おどけたことを言っては人を笑わせてばかりいるので、近....