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「翹望〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

翹望の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
並木」より 著者:島崎藤村
妻とすら一緒に歩いたことのない原は、時々立留っては眺め入った。「これが首を延して翹望《まちこが》れていた、新しい時代というものであろうか」こう原は自分で自分に尋....
新生」より 著者:島崎藤村
持になった。何かこう遠い先の方で、自分等を待受けていてくれるものがある。こういう翹望《ぎょうぼう》は、あだかもそれが現在の歓喜であるかの如《ごと》くにも感ぜられ....
惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
創り上げた文化と、女性のそれとの正しき抱擁によって、それによってのみ、私達凡ての翹望する文化は成り立つであろう。 更に私は家族生活について申し出しておく。家族....
」より 著者:島崎藤村
こんな請求の仕方も為まいと想像された。そして、小泉の一族の上に、何となく暗い雲を翹望けるような気がした。 三吉は断りかねた。と言って、余裕のあるべき彼の境涯で....
」より 著者:島崎藤村
新聞は、隅田川の満潮と、川開の延期とを伝えた。水嵩が増して危いという記事は、折角翹望けた娘達をガッカリさせた。そうでなくても、朝から冷しい夏の雨が降って、出掛け....
梅津只円翁伝」より 著者:杉山萠円
重大事件であったろうと思われる。同時に翁のそこまでの苦心とこれに対する一般人士の翹望は非常なものがあったに違いない事が想像されるので、その能が両日に亘り、黒田藩....
踊る地平線」より 著者:谷譲次
う。 セエヌの谷――「巴里」。 こうして、何だか自分でもはっきりしないものを翹望して旅をつづけて来た流人達は、一度セエヌの谷へ這入るや、呪縛されたようにもう....
溺るるもの」より 著者:豊島与志雄
一転を求めてる一人の男と、生に喘いでる一人の女とだった。更に、新生の力強い世界を翹望してる者と、愛慾の世界を荷ってる者とであった。その二人が、そこに眼前に小さく....
故郷」より 著者:豊島与志雄
見渡してる時、心の中に澱むような何かだ。空虚だとも云えるし、苦悩だとも云えるし、翹望だとも云える。死のようなものだ。そいつを見出した時、僕は駭然とした。日の光は....
或る日の対話」より 著者:豊島与志雄
。それでは、この喪に似た寂寥は何か。 全然新たな時代なのである。たとえ夢想され翹望されたことはあっても、実現は遠い将来と思われていた、その自由の世界へ、即刻只....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
ない幽鬼的観念」のために、凍らされたような気がしていた。一身の力をしぼって太陽を翹望《ぎょうぼう》していた。周囲の偽善にたいする、あるいは彼が偽善と名づけてるも....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
で、困難な生活をし、達せられるかどうか自分でもわからないある理想を、一身をあげて翹望《ぎょうぼう》していた。そしてクリストフの親愛な魂を、むさぼるように吸い込ん....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
であって、周囲から圧迫され、鎖を脱しようともがき苦しみ、うち開けた広々した生活を翹望《ぎょうぼう》し、魂の満々たる大気を翹望し、しかもなおそれを恐れ、自分の本能....
夢殿殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
る図書番号の聯想が現われたからなんだ。然し、動機は一言にして云い尽せるよ。奇蹟の翹望なんだ。ユダ(ユダの叛逆は耶蘇に再生の奇蹟を見んがためと云われる)、グセフワ....
賤民概説」より 著者:喜田貞吉
差別されていた。明治四年エタ非人の称を廃して平民となした時に、彼らも平民の地位を翹望し、願書を提出して、「平民申付候事」という滑稽な処分を受けた実例がある。その....