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「翻し〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

翻しの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
偸盗」より 著者:芥川竜之介
た愛憎の深みである。太郎は、狂気のごとく、弟の名を口外に投げると、身をのけざまに翻して、片手の手綱《たづな》を、ぐいと引いた。見る見る、馬の頭《かしら》が、向き....
出帆」より 著者:芥川竜之介
前には、背の高い松岡《まつおか》と背の低い菊池《きくち》とが、袂《たもと》を風に翻しながら、並んで立っている。そうして、これも帽子をふっている。時々、久米が、大....
三つのなぜ」より 著者:芥川竜之介
林の樹の中に林檎のあるがごとし。 ………………………………………… その我上に翻したる旗は愛なりき。 請ふ、なんぢら乾葡萄をもてわが力を補へ。 林檎をもて我に....
空襲葬送曲」より 著者:海野十三
島一等兵。電話で司令部へ、報告せい。空襲警報用意よし!」 「はいッ」一等兵は身を翻して、天幕のところへ帰った。「空襲警報用意よし」 天幕の中の通信員は、送話器....
ゴールデン・バット事件」より 著者:海野十三
のは、返さない心算だな。よオし、殺しちまうぞ」 そう呶鳴ると丘田医師は忽ち身を翻して、傍の棕櫚の鉢植に手をかけた。彼の細腕は、五十キロもあろうと思われるその重....
」より 著者:海野十三
覧なさい」 ブルブルと顫う助手の指先は、表通に面した窓を指した。 博士は身を翻して、窓際に駈けつけた。そして硝子を通して、往来を見た。 大勢の人がワイワイ....
恐怖の口笛」より 著者:海野十三
下からは駈けつけた大江山課長等がワッと上ってきたのを見ると、 「やッ」 と身を翻してそこに開いていた窓を破って屋上へ逃げた。 「それ、逃がすなッ」 一同はつ....
地中魔」より 著者:海野十三
大江山課長は双眼鏡を借りて指さされた遥か彼方の海上を見た。なるほど水上署の旗を翻した一艘の汽艇が矢のように沖合を逃げてゆく。 「あッ!」課長は舷から乗り出さん....
千早館の迷路」より 著者:海野十三
捨てた。 「綺麗な答えですわ。やっぱり奥へ行けばいいのでしたわね」 春部は身を翻して奥へ駆入ろうとする。それを帆村が呀っと叫んで引戻した。 「待った、恐ろしい....
暗号音盤事件」より 著者:海野十三
と共に、彼の傍の窓硝子が水のように飛び散った。 と、こんどは白木がひらりと身を翻して床の上に腹匐いになると、例の機銃を肩にあてて遂に銃声はげしく撃ちだした。私....
売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
を泣かせてやれか。」 と黄八丈が骨牌を捲ると、黒縮緬の坊さんが、紅い裏を翻然と翻して、 「餓鬼め。」 と投げた。 「うふ、うふ、うふ。」と平四郎の忍び笑が、....
故郷」より 著者:井上紅梅
だ。塵ッ葉一つ出さなければますますお金が溜るわけだ」 コンパスはむっとして身を翻し、ぶつぶつ言いながら出て行ったが、なお、行きがけの駄賃に母の手袋を一双、素早....
三重宙返りの記」より 著者:海野十三
して僕を元気づけてくれる。ここに於て、僕は秒前までの乗らないという決心をさらりと翻し、 「はい、乗りましょう」 といって、オーバーの釦に手をかけた。これが最初....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
りて恵金を請わしむるもあり。これ新意匠なり。午前十一時出港。開南丸が旭旗を晴風に翻して湾内にあるを見る。二百トンの小艇なり。海上風なく波平らかにして、春海のごと....
本所両国」より 著者:芥川竜之介
天神様へは容易に出ることも出来なかった。すると道ばたに女の子が一人メリンスの袂を翻しながら、傍若無人にゴム毬をついていた。 「天神様へはどう行きますか?」 「あ....