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「肉声〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

肉声の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
勲章を貰う話」より 著者:菊池寛
った。彼女は一座のスターではなかった。が、その娘らしい表情と潤《うるお》いのある肉声とは、容易にイワノウィッチの心に食い入ってしまった。彼女の丸い顔立とやや黄味....
あの時分」より 著者:国木田独歩
さり、それを合図に一同が立つ。そして男子の太い声と婦人の清く澄んだ声と相和して、肉声の一高一低が巧妙な楽器に導かれるのです、そして「たえなるめぐみ」とか「まこと....
最終戦争論」より 著者:石原莞爾
拡声器が発達すれば「前へ進め」と三千名の連隊を一斉に動かし得るかも知れませんが、肉声では声のよい人でも大隊が単位です。われわれの若いときに盛んにこの大隊密集教練....
海底大陸」より 著者:海野十三
呼び出し信号はブウブウブウブウと、しきりに鳴った。と、やがて聞こえてきた博士の肉声! 「おお、ルゾン号の船長さんですか。大学では、今こっちかられんらくしようと....
母子叙情」より 著者:岡本かの子
ような覚えもする。未来永遠に聴ける約束の声であるような気もする。そしていまそれを肉声で現実に聴くのだ。 かの女は身慄いが出るほど嬉しくなる。 だが、このむす....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
ろに悲しくなった。 しかし仙台の国歌とも云うべき「さんさ時雨」が、芸妓の生鈍い肉声に歌われて、いわゆる緑酒紅燈の濁った空気の中に、何の威厳もなく、何の情趣も無....
小唄のレコード」より 著者:九鬼周造
唄や小唄を聞くと全人格を根柢から震撼するとでもいうような迫力を感じることが多い。肉声で聴く場合には色々の煩わしさが伴ってかえって心の沈潜が妨げられることがあるが....
貞操問答」より 著者:菊池寛
ると、つい新子と相対坐しているような楽しい気持になった途端、彼はマザマザと新子の肉声を、耳にしたような気がした。 「ご免下さい!」 二度目に、ハッキリと下から....
大捕物仙人壺」より 著者:国枝史郎
が、きっと夢でも見たのだろう。 なまめかしい春の夜の、甘い空気を顫わせて、艶な肉声と三味線の音とは、なおあざやかに聞こえていた。 刺客は頭をうなを変えると、....
雑文的雑文」より 著者:伊丹万作
てくれるのだから世話はない。そのかわり機械は機械でいくら完全に近くなつても決して肉声そのものではない。ことに現在の日本の機械の能力では俳優が機械から受ける制限に....
俳優倫理」より 著者:岸田国士
いている方がいいようなものです。ところが、ラジオ・ドラマというもの、つまり人間が肉声によって一つの物語を伝えるということは、必ずしも耳だけに訴える感覚ではなくて....
俳優と現代人の生活(対話Ⅴ)」より 著者:岸田国士
世的な、荒みきつた、野蛮な声の見本です。だから舞台の上で人間的に魅力のある美しい肉声というものが稀にしかきかれなくなつた。非常に薄つぺらな無教養を露骨に示した、....
無表情の表情」より 著者:上村松園
いろいろです。単なる動作や進退の妙というだけのものではなく、衣裳の古雅荘厳さや、肉声、器声の音律や、歴史、伝説、追憶、回想、そういうものが舞う人の妙技と合致して....
二葉亭余談」より 著者:内田魯庵
日本国民が二千年来この生を味うて得た所のものが間接の思想の形式に由らず直ちに人の肉声に乗って無形のままで人心に来り迫るのだ」とあるは二葉亭のこの間の芸に魅入られ....
ベートーヴェンの生涯」より 著者:ヴェーゲラーフランツ・ゲルハルト
トラの座席のすぐ脇にいなければならない。少しでも遠ざかると、楽器の高い調子の音も肉声も聴き取れない。会話のとき、まだこれを感づいた人々の無いのが不思議なくらいだ....