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肥やす
「肥やす〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
肥やすの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
も慾の世の中だ。異人でもマドロスでも構わねえ、銭のある奴は相手にして、ふところを
肥やすのが当世かも知れねえ」と、松吉は笑った。 「まあ、そうかも知れませんね」と....
「恐怖城」より 著者:佐左木俊郎
も、自殺したんでもねえんだ。突き落とされたんだ。自分の財産のために、自分の財産を
肥やすために、おれらの親父を突き落とした奴《やつ》がいるんだ。おれらの親父は開墾....
「街頭から見た新東京の裏面」より 著者:杉山萠円
たろうと思われる。うちを空っぽにして遊ぶことばかり考えている……儲けた金で妻子を
肥やすのをシミッタレと考えている心理状態がよくわかる。だから江戸ッ子のうちは繁昌....
「ニッケルの文鎮」より 著者:甲賀三郎
リしか入らないんですって。会計の方は一切清水が握っていて、いわば先生は清水の懐を
肥やす為に、毎日働いていなすったんだわ。先生はいろいろご本をお書きになって、世界....
「工場細胞」より 著者:小林多喜二
いぞえ 製罐工場の女工さんは 一度港出て罐詰になって 帰りゃ国を富まして身を
肥やす 無くちゃならない罐つくる。 自慢じゃ御座んせぬ 製罐工場の女工さんは ....
「小説 不如帰 」より 著者:徳冨蘆花
なしつ。如才なく切って回す力量なきかわりには、主家の収入をぬすみてわがふところを
肥やす気づかいなきがこの男の取り柄と、武男が父は常に言いぬ。されば川島|未亡人に....
「舗道」より 著者:宮本百合子
たけれど、全く法がえしがつかないの。だからミサちゃんの都合さえよかったら、よそを
肥やすより、うちをすけて貰えまいかしらと思って――」 ミサ子が急場の返事に困っ....
「渋江抽斎」より 著者:森鴎外
守居中有数の人物であったらしい。帆足万里はかつて留守居を罵って、国財を靡し私腹を
肥やすものとした。この職におるものは、あるいは多く私財を蓄えたかも知れない。しか....
「ドグラ・マグラ」より 著者:夢野久作
では。打たれたたかれ追いこくられます。飢えて凍えてたおれた処の。木の根、草の根、
肥やすか知れない。それを承知で見棄てる鬼をば。キョロリキョロリと探して見まわす。....
「駆逐されんとする文人」より 著者:内田魯庵
一である。 ▲文人の資本は紙と筆ばかりのように云う人があるが、文人は常に頭脳を
肥やす滋養代に中々資本が要る。芝居を見るのもカフエへ行くのも、時としては最少し深....
「北氷洋の氷の割れる音」より 著者:寺田寅彦
するころにはいつのまにかすっかり消化され日本化されてしまって結局はみんな大日本を
肥やす肥料になっていた。 しかし科学的物質的の侵略の波は決して夢のようなもので....
「病院風景」より 著者:寺田寅彦
学教室で屍体解剖をした学生の手洗水が、下水を通して不忍池に流れ込み、そこの蓮根を
肥やすのだと云うゴシップは、あれは嘘らしい。 廊下の東詰の流しの上の明かり窓か....
「たぬき汁」より 著者:佐藤垢石
木の緑の葉も、艶彩のさかりを過ぎていた。やがて、遠からず団栗も色づいて、猪の肉を
肥やす季節がくるのであろうなどと、まことにのんきなことを考えながら、峠のてっぺん....
「淡島椿岳」より 著者:内田魯庵
おる。 椿岳の米三郎は早くから絵事に志ざした風流人であって、算盤を弾いて身代を
肥やす商売人肌ではなかった。初めから長袖を志望して、ドウいうわけだか神主になる意....
「旅の旅の旅」より 著者:正岡子規
熱海に着きたる頃はいたく疲れて飢に逼《せま》りけれども層楼高閣の俗境はわが腹を
肥やすべきの処にあらざればここをも走り過ぎて江《え》の浦《うら》へと志し行く。道....