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「脈打つ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

脈打つの前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
さまじく鳴り響いた。港にはいった相図をしているのだなと思った。と思うと今まで鈍く脈打つように見えていた胸が急に激しく騒ぎ動き出した。それが葉子の思いも設けぬ方向....
三狂人」より 著者:大阪圭吉
えていた。全く静かだ。その静けさの中から、低く遅くだが追々速く高く、宇吉の心臓の脈打つ音だけが聞えて来た。 「……これァ……どえらい事になったゾ!」 思わず呟....
地は饒なり」より 著者:宮本百合子
と音との調和、物と影との離れることのない睦まじい結合を繞《めぐ》って、ゆるやかに脈打つ生命の力を感じるとき。彼女は祈らずにはいられない感動に打たれるのである。 ....
文学に関する感想」より 著者:宮本百合子
描くことこそマルクス・レーニン主義的であり、唯物弁証法的であり、今日の闘争と切々脈打つところのわれわれの歴史小説でなければならぬのだ。」この徳永の解説にわれわれ....
道成寺(一幕劇)」より 著者:郡虎彦
|已み、これに代えてさらに怖るべき物の音を聞き出でたるがごとく、恐怖の流れ、漲り脈打つがごとき間。 妙念顕わる。さきに墜ち入りたるほとりの雑草に、血に染みて生け....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
フの手の中にひきつっていた。彼らは握りしめた掌《てのひら》とうち震う指とに、血が脈打つのを感じた。あたりはひっそりとしていた。木々の金緑の若芽が、日の光に顫《ふ....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
た。しかし鏡も水も、彼自身の反映をしかもたらさなかった。歩行の刺激、新鮮な空気、脈打つ強健な血潮、それらは彼のうちに音楽を呼び覚《さま》した。彼は自分を欺こうと....
南国太平記」より 著者:直木三十五
光は、自分の兄に対する唯一の好意が、兄を怒らせ、兄を苦しめていそうなので、不安に脈打つ胸を押えて、俯向いていた。 「わしは、富国強兵の策として、理化学の外にない....
地上」より 著者:島田清次郎
な太陽と燃える大空と万物が生気に喘ぐ異常な天地とが、運動のために汗ばんだ肉身には脈打つように感じられた。第六時間には集会所でA氏の話があるので、彼は仕方なしに級....
卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
出づる、玉に綾なす姿とともに、天人が見はるかす、松にかかった舞台の羽衣の錦には、脈打つ血が通って、おお空の富士の雪に照栄えた。 八郎のその化け方も不思議だが、....
勝ずば」より 著者:岡本かの子
めな最後に死んで行くよりいっそ今直ぐに自分から死のうと決心したのであった。自分の脈打つ手首の動脈を切って、そっと死んでしまおうといよいよ政枝が決心したのは二三日....
長崎の鐘」より 著者:永井隆
っそりとなった。さるすべりも夾竹桃もカンナもよどんだ血のように動かない。その中を脈打つような蝉の声が向こうの山王神社の大楠から流れてくる。 この日は防空当番教....