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「芳醇〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

芳醇の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
御便利ですよ。御案内しましょう」 といいながら葉子をすり抜けて先に立った。何か芳醇《ほうじゅん》な酒のしみと葉巻煙草《シガー》とのにおいが、この男固有の膚のに....
或る女」より 著者:有島武郎
いつでも葉子の情熱を引っつかんでゆすぶり立てるような倉地特有の膚の香《にお》い、芳醇《ほうじゅん》な酒や、煙草《たばこ》からにおい出るようなその香《にお》いを葉....
奇賊は支払う」より 著者:海野十三
んだようになっている繭子夫人――名探偵猫々先生の口へ持っていった。 強烈にして芳醇なる蒸発性物質が名探偵の鼻口を刺戟したらしく、彼は大きなくしゃみと共に生還し....
毒瓦斯発明官」より 著者:海野十三
いなしです」 「相当にうるさいね、君は」 「いや、酔払ったんです。これもこの酒の芳醇なる故です。そこで先生、酒の実験はこのくらいにして、お約束ですから、かねがね....
異国食餌抄」より 著者:岡本かの子
エメラルド・グリーンのペルノーを、女は真紅のベルモットを好む。新鮮な色彩が眼に、芳醇な香が鼻に、ほろ苦い味が舌に孰れも魅力を恣にする。 午後七時になるとレスト....
「自然」」より 著者:豊島与志雄
を最も多く保有している。 酒類も同様である。アブサントを好む者は、その天然的な芳醇さに惹きつけられるのである。日本酒の最上は、醗酵菌作用中のどぶろくの上澄みに....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
ら霊妙な歌の起こるのが聞こえていた。そして畑地の上には、大地の表皮を破って生命の芳醇《ほうじゅん》な気が通り過ぎていた。 彼は光明で鳴りわたる頭をもって、散歩....
次郎物語」より 著者:下村湖人
ごろ彼の胸にはっきり映り出した母の澄みとおった愛と、ひさびさでよみがえった乳母の芳醇な愛とが、彼の夢の中で烈しく熔けあっていたからである。 お浜に会ってからの....
自由人」より 著者:豊島与志雄
ねなかった。そのことがへんに北村の気にかかった。 周が取り寄せたウォートカは、芳醇で強烈だった。その合間には日本酒も味が増して感ぜられた。北村は殆んど料理に手....
次郎物語」より 著者:下村湖人
もし、彼を里子として育ててくれた乳母のお浜の、ほとんど盲目的だとも思われるほどの芳醇な愛や、彼の父俊亮の、聰明で、しかも素朴さを失わない奥深い愛が、いつも彼の背....
地上」より 著者:島田清次郎
黙と絶え入るような絶叫の大交響楽が階上の一室に高らかに鳴り響いていた。新鮮な肉と芳醇な酒とが彼等の心肉を温めて来た。尾沢は酒を呷りつつ雄弁に語りはじめた。 「永....
わが童心」より 著者:佐藤垢石
日本人は清いのである。晴温なる空の色、かぐわしき野の匂い、清楚な水の流れ、情味の芳醇な山の姿。どうして、こんないい国を亡ぼすことができよう。人々の抱くその感懐が....
すっぽん」より 著者:佐藤垢石
融然として舌端に蕩け、胃に降ってゆく感覚は、これを何に例えよう。これに誘われ酒の芳醇、吟々として舌根にうったえる。私は、銀色の銚釐を静かに小杯に傾けながら、夫人....
ザザ虫の佃煮」より 著者:佐藤垢石
かこんだ。高遠の有志から、酒と重箱の贈りものがあった。酒は仙醸と呼んで、まことに芳醇である。重のなかは肴であるそうである。やがて、博士は重箱の蓋をとった。みると....
卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
の酒を、八郎が地酒だ、と冷評したのを口惜がって、――地酒のしかも「剣」と銘のある芳醇なのを、途中で買って、それを角樽で下げていたのであるから。 掛けたか、掛け....