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苦渋
「苦渋〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
苦渋の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「ある心の風景」より 著者:梶井基次郎
」 喬はそんなことを思った。毎夜のように彼の坐る窓辺、その誘惑――病鬱や生活の
苦渋が鎮められ、ある距《へだた》りをおいて眺められるものとなる心の不思議が、ここ....
「闇の絵巻」より 著者:梶井基次郎
ができよう。勿論われわれは摺《すり》足でもして進むほかはないだろう。しかしそれは
苦渋や不安や恐怖の感情で一ぱいになった一歩だ。その一歩を敢然と踏み出すためには、....
「老妓抄」より 著者:岡本かの子
から日々の雑役も忍べていたのだがその通りに朝夕を送れることになってみると、単調で
苦渋なものだった。ときどきあまり静で、その上全く誰にも相談せず、自分一人だけの考....
「雛妓」より 著者:岡本かの子
字の五文字を胸に思い泛べただけで急いで帰宅の俥に乗り込んだだけを記して、早くこの
苦渋で憂鬱な場面の記述を切上げよう。 「奥さまのかの子さーん」 夏もさ中にかか....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
るんだ」と法水はなにげなさそうに答えたけれども、なにやら逆説に悩んでいるらしく、
苦渋な暗い影が現われていた。熊城は結論を云った。
「とにかく、切創が死因に関係な....
「愛の問題(夫婦愛)」より 著者:倉田百三
なものではつまらない。初めは恋愛から入って、生活と歳月の移るにしたがって、人生の
苦渋にもまれ、鍛えられて、もっと大きな、自由な、地味なしんみの、愛に深まっていく....
「首頂戴」より 著者:国枝史郎
さあさあ大膳腹を切ろう。まごまごしていると捕方が来る。それにしても」と伊賀之助、
苦渋の色を顔に浮べた。「淀川堤に住んでいた、乞食のことが気にかかる。……彼奴見抜....
「前記天満焼」より 著者:国枝史郎
後世史家が何と申すやら、この点懸念にござります」 「うむ」と云ったが大塩中斎も、
苦渋の表情をチラツカせた。 「拙者もそれを危惧ている。と云って目前の餓鬼道を見遁....
「光り合ういのち」より 著者:倉田百三
た人間になりつつある。しかもそれは成功的にではなく、落第点とすれすれに、努力的な
苦渋さを以てなされつつあるのだ。もし私が世事を放擲してしまうならば、私はもっと安....
「勝負師」より 著者:織田作之助
あろう。してみれば、子供の泣き声に惹かれるという坂田の詞のうらには、坂田の人生の
苦渋が読み取れる筈だと言ってもよかろう。しかも坂田がこの詞を観戦記者に語ったのは....
「チチアンの死」より 著者:木下杢太郎
るのは――畢竟、先生が僕たちに、物を見ることを教えてくだすったからなんですよ。(
苦渋の調子にて。)だがあの下の町の人々にはそんな事は一切分らないでしょう。 デジ....
「バットクラス」より 著者:岡本かの子
ルとはよく名を付けたものだ。これは熱帯国の木の実が焙じられた時、うめき出す濃情な
苦渋の色そっくりだ。酒であって珈琲、珈琲であって酒なのだ。夫人は霧の朝の蒼暗い光....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
すぐに石油を買う体裁、なけなしの内金で、その夜は珍らしく肴を見せた、というのが、
苦渋いなまり節、一欠片。大根おろしも薄黒い。 が、「今に見たまえ、明日にも大船....
「二葉亭余談」より 著者:内田魯庵
はやはり昔し取った杵柄の若辰の物真似であったろう。「謹厳」が洋服を着たような満面
苦渋の長谷川辰之助先生がこういう意表な隠し芸を持っていようとは学生の誰もが想像し....
「宝永噴火」より 著者:岡本かの子
稽な譬え話の羅列にしか感じられない。そして、順序に連絡が欠けている点さえ読む者に
苦渋を与える。しかも、この聖典の作者は極力、この経の功徳の広大を説いて受持、読誦....