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茫乎
「茫乎〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
茫乎の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「国貞えがく」より 著者:泉鏡花
数百《すひゃく》の燈火《ともしび》の織目《おりめ》から抜出《ぬけだ》したような薄
茫乎《うすぼんやり》として灰色の隈《くま》が暗夜《やみ》に漾《ただよ》う、まばら....
「吾輩は猫である」より 著者:夏目漱石
ぜん》として一掬《いっきく》の涙《なんだ》を紫の袴《はかま》の上に落した。主人は
茫乎《ぼうこ》として、その涙がいかなる心理作用に起因するかを研究するもののごとく....
「幽霊塔」より 著者:黒岩涙香
まくらもと》へ座を占めたが、甚蔵は家に帰り着いた安心の為好く眠り込んだ、婆は唯|
茫乎《ぼんやり》して甚蔵の寝顔を見て居る、爾して犬は獰猛な質に似ず、余の膝へ頭を....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
気もの――折竹にはそういう反面もある。童顔で、いまの日本人には誰にもないような、
茫乎とした大味なところがある。それに加えて、細心の思慮、縦横の才を蔵すればこそ、....
「創作家の態度」より 著者:夏目漱石
ります。そうしてこの現代精神は実を云うと、読者がめいめい胸の中にもっている。ただ
茫乎漠然《ぼうこばくぜん》たるある標準になって這入《はい》っているのだから、私の....
「運命」より 著者:幸田露伴
して郷中諸友に別るゝの長詩に、 我|生れて 四方の志あり、 楽まず 郷井の中を。
茫乎たる 宇宙の内、 飄転して 秋蓬の如し。 孰か云ふ 挾む所無しと、 耿々たる....
「春昼」より 著者:泉鏡花
帰るわけにもなりませんような羽目になったとか言って、懐中の紙入に手を懸けながら、
茫乎見ていたと申します。 また、陰気な、湿っぽい音で、コツコツと拍子木を打違え....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
ってくんねえ、頼むぜ、おい。」 呆れたものいいと、唐突の珍客に、茶屋の女どもは
茫乎。 四十四 島野は、時というとこの苦手が顕れるのを、前世の因....
「レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
ーゴモン、フリシュモン、パプロット、プランスノアなど、すべてそれらの凶暴な高地は
茫乎《ぼうこ》と現われきたって、その上には、互いに殲滅《せんめつ》し合う幽鬼の旋....
「春盲」より 著者:豊島与志雄
してそこに安らうようなものである。日の光りもなく、風もなく、漣もなく、ただ一面に
茫乎としているのだ。 そのような時、彼はただ機械的に起き上っていた。寝ていたい....
「陳情書」より 著者:西尾正
許を掬《すく》われる程所謂泥酔の境地は嘗《かつ》て経験した事無く、只幾分か頭脳が
茫乎《ぼんやり》して来まして所謂軽度の意識|溷沌《こんとん》に陥り追想力が失われ....
「南国太平記」より 著者:直木三十五
ような、そうでなかったような、そして、自分のそこでしたことは、見残した夢の如く、
茫乎《ぼんやり》として、水の影の如く薄れて――ああしたことを、この自分が、本当に....
「顎十郎捕物帳」より 著者:久生十蘭
のびている。よって、阿古に濁《にご》りを打って仙波顎十郎と呼ばれる。 見かけは
茫乎《ぼうこ》としてつかまえどころがないが、これで相当の奇才。江戸一の捕物の名人....
「二葉亭余談」より 著者:内田魯庵
かった。二葉亭に接近してこの鋭どい万鈞の重さのある鉄槌に思想や信仰を粉砕されて、
茫乎として行く処を喪ったものは決して一人や二人でなかったろう。 それがしの小説....
「それから」より 著者:夏目漱石
を抑える様にして、櫛を束髪の根方へ押し付けて、上眼で代助を見ながら、 「相変らず
茫乎《ぼんやり》してるじゃありませんか」と調戯《からか》った。 「御父さんから御....