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茫漠
「茫漠〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
茫漠の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
の見知らない男の話を聞かないと云う訳には行かなかった。が、同時にまた不吉な予感と
茫漠とした一種の責任感とが、重苦しく私の心の上にのしかかって来るような心もちもし....
「食魔」より 著者:岡本かの子
た。彼が独身生活を続けるのも、そこから来るのであったが、情慾は強いかして彼の描く
茫漠とした油絵にも、雑多に蒐められる蒐集品にも何かエロチックの匂いがあった。痩せ....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
ということは自己満足です。お父さんがお母さんに対する愛は大きいですが、お父さんの
茫漠性が、かなりお母さんに害を与えていると思います。お父さんの
茫漠性は長所であり....
「河明り」より 著者:岡本かの子
から一緒に育ったけれども、青年期に入る頃から海に出はじめ、だんだん父娘には性格が
茫漠として来た若い店員には、今はもう強いて遠慮する必要は無い。娘の結婚を知らせる....
「雛妓」より 著者:岡本かの子
じるしく映じさすのであった。更に思い廻らされて来るこれから迎えようとする幾歳かの
茫漠とした人世。 水鳥はもう寝たのか、障子の硝子戸を透してみると上野の森は深夜....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
れから三十幾年を経過した今日では、現在その土地に住んでいる人たちでも、昔の草原の
茫漠たる光景をよく知っている者は少ないかも知れない。武蔵野の原に大江戸の町が開か....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
嫌疑もない――といって、その姓名さえも聞こうとはしないのだから、当然結論の見当が
茫漠となってしまって、この一事は、彼が提出した謎となって残されてしまった。
階....
「棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
い焼け野原のところ――といっても町名は明かではなく、どこからどこまでも区切のない
茫漠たる一面の焼け武蔵野ヶ原であったけれど――この原庭と思われる辺に来て、杜は不....
「転機」より 著者:伊藤野枝
いた一脈の山々がちぢこまって見える他は、目を遮るものとては何物もない、ただ一面の
茫漠とした沼地であった。重く濁った空は、その広い沼地の端から端へと同じ広さで低く....
「病房にたわむ花」より 著者:岡本かの子
れたその狂院に咲き満ちて居た桜の花のおびただしさ、海か密雲に対するように始め私は
茫漠として美感にうたれて居るだけでした。が、やがて可憐な精神病患者が遊歩するのを....
「かの女の朝」より 著者:岡本かの子
し、その区切りの中間から見透す空の色を一種の魔性に見せながら、その性全体に於ては
茫漠とした虚無を示して十年の変遷のうちに根気よく立っている。かの女は伊太利の旅で....
「紅毛傾城」より 著者:小栗虫太郎
郎は、静かに砂を踏み、入江を囲む、岬の鼻のほうに歩んで行った。 青白い日光が、
茫漠たる寂寥の中で、こうもはっきりと見られるのに、岬の先では、海が犠牲をのもうと....
「決闘場」より 著者:岡本かの子
沈黙に落ちた。魂の底を突き抜けて虚無の中にまで沈んだような、脱力の沈黙であった。
茫漠とした沈黙であった。其処から一番早く這い上ったアイリスではあったが、今は少し....
「三崎町の原」より 著者:岡本綺堂
れから三十幾年を経過した今日では、現在その土地に住んでいる人たちでも、昔の草原の
茫漠たる光景をよく知っている者は少いかも知れない。武蔵野の原に大江戸の町が開かれ....
「宝永噴火」より 著者:岡本かの子
識しつつ獣に喰い尽されるのは、まだ堪えることも出来る。いつとも知らず相手を判らず
茫漠のうちに喰い尽されて失くなることは想像するだに不安の極みだ。自分は飽くまで眼....