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萌し
「萌し〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
萌しの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「富士」より 著者:岡本かの子
う。しかしわけを聞いてみればその道理もないことはない。ふる郷を立つときから紅色に
萌し始めた人情の胸の中の未練のほむらは子の慕わしさにかき立てられ旅の憂さに揺り拡....
「吉良上野の立場」より 著者:菊池寛
差し出すと、 「いざ!」といった。 短刀を突きつけられると、上野の頭に、わずか
萌していたあきらめは、たちまちまた影をかくした。自分の立ち場も言い分も、敵討とい....
「恩讐の彼方に」より 著者:菊池寛
仏の安座を離れず、二|行彬々《ぎょうひんぴん》として豁然智度《かつぜんちど》の心
萌し、天晴れの知識となりすました。彼は自分の道心が定まって、もう動かないのを自覚....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
を引き締めて行かなければ、そこが違うんでしょうねえ」 けれども、一たんむす子へ
萌した尊敬の念は、あとから湧き起るさまざまの感傷をも混えて、昇り詰めるところまで....
「河明り」より 著者:岡本かの子
部屋を望んだ動機がそもそも夢だったのだろうか。 すでにこの河面に嫌厭たるものを
萌しているその上に、私はとかく後に心を牽れた。何という不思議なこの家の娘であろう....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
は確かだった。その悪疫のような空気は、明治三十五年に第二の変死事件が起った折から
萌しはじめたもので、それが、十月ほど前に算哲博士が奇怪な自殺を遂げてからというも....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
ものの楽屋に縁がある――ほんの少々だけれども、これは筋にして稼げると、潜に悪心の
萌したのが、この時、色も、慾も何にもない、しみじみと、いとしくて涙ぐんだ。 「へ....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
う。お同伴は、と申すと、外套なし。」 「そいつは打殺したのを知ってる癖に。」 「
萌した悪心の割前の軍用金、分っているよ、分っている……いるだけに、五つ紋の雪びた....
「貞操問答」より 著者:菊池寛
は、そうやすやすとは会わないという肚だろうか)そんな邪推が、新子の心に、ようやく
萌し始めた。 夫人の姿は、現れずして三十分近く経った。 準之助氏はたまりかね....
「夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
文化を推進せしめるものは外国文化の影響刺戟に因るものであるという信念がいつからか
萌していてさして発育もしなかったが、根は抜けずに、そのままになっていて、萎れると....
「ドーヴィル物語」より 著者:岡本かの子
取入れたホテルの玄関へ小田島が車を乗り付けた時、傍の道路の闇に小屋程の塊が、少し
萌して来た暁の光を受け止めて居るのが眼に入った。彼の疲れた体にその塊は、強く生物....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
ろうとして苦悶していたはこれを見ても明かである。 この決心は第三篇の執筆中から
萌していた。あくまでも自分の天分を否定し、文学ではとても生活する能力はないものと....
「チベット旅行記」より 著者:河口慧海
た。私も一日ここに泊って居っても禍いでも買うような種になりはすまいかというような
萌しもありますから「じゃあそろそろ出掛けることに致しましょう」といってチーキャブ....
「波の如く去来す」より 著者:小川未明
が伴い、喜びの裡に悲しみの潜むのと同じである。しかし悲しみの中にも来るべき喜びの
萌しのあるのも勿論だ。 人間は苦悩に遭遇した時、「いつこの悩みから逃れられるの....
「男の子を見るたびに「戦争」について考えます」より 著者:小川未明
ま、世界の事情を観考するのに、第二の世界戦争が太平洋を中心として、次第に色濃く、
萌しつゝあるが如くです。 それが、いよ/\現実の問題となって、四海が波立つこと....