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蔽い
「蔽い〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
蔽いの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「開化の良人」より 著者:芥川竜之介
で黒幕でも垂らしたように、椎《しい》の樹《き》松浦《まつうら》の屋敷の上へ陰々と
蔽いかかったまま、月の出らしい雲のけはいは未《いまだ》に少しも見えませんでした。....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
尤《ごもっと》もです。が、その東京の町々の燈火が、幾百万あるにしても、日没と共に
蔽いかかる夜をことごとく焼き払って、昼に返す訣《わけ》には行きますまい。ちょうど....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
「もう、私は、」と堪りかねたか、早瀬の膝をハタと打つと、赤らめた顔を手巾で半ば
蔽いながら、茶店を境内へ衝と出る。 十三 どこも変らず、風呂敷包....
「小春の狐」より 著者:泉鏡花
、その言に連れて振返ると、つれの浪路は、尾花で姿を隠すように、私の外套で顔を横に
蔽いながら、髪をうつむけになっていた。湖の小波が誘うように、雪なす足の指の、ぶる....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
筈、」 枢をかたかた、ぐっと、さるを上げて、ずずん、かたりと開ける、袖を絞って
蔽い果さず、燈は颯と夜風に消えた。が、吉野紙を蔽えるごとき、薄曇りの月の影を、隈....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
隠す嬌態らしい、片手柔い肱を外に、指を反らして、ひたりと附けた、その頤のあたりを
蔽い、額も見せないで、なよなよと筵に雪の踵を散らして、静に、行燈の紙の青い前。 ....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
。 三人の影が大きく向うの空地へ映ったが、位置を軽く転ずれば、たちまち、文金に
蔽いかかりそうである。烏がカアと鳴いた。 こうなると、皆化ける。安|旅宿の辻の....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
、同一扮装の女の童。 竪矢の字の帯の色の、沈んで紅きさえ認められたが、一度胸を
蔽い、手を拱けば、たちどころに消えて見えなくなるであろうと、立花は心に信じたので....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
、えへん! と大きく、調子はずれに響いたので、襯衣の袖口の弛んだ手で、その口許を
蔽いながら、 「おい、おい。」 寝た人には内証らしく、低調にして小児を呼んだ。....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
に留まった梟のようで、その天窓大きく、尻ッこけになって幾千仭とも弁えぬ谷の上へ、
蔽い被さって斜に出ている。裾を蹈んで頭を叩けば、ただこの一座山のごとき大奇巌は月....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
頭目に訊ねて置くがよいであろう……。』 やがて古い古い杉木立がぎっしりと全山を
蔽いつくして、昼尚お暗い、とてもものすごい所へさしかかりました。私はますます全身....
「怨霊借用」より 著者:泉鏡花
子にも似ず、したたかな酒の香である。 酒ぎらいな紳士は眉をひそめて、手巾で鼻を
蔽いながら、密と再び覗くと斉しく、色が変って真蒼になった。 竹の皮散り、貧乏徳....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
、叫ぶ声、女どもの形は、黒い入道雲を泳ぐように立騒ぐ真上を、煙の柱は、じりじりと
蔽い重る。…… 畜生――修羅――何等の光景。 たちまち天に蔓って、あの湖の薬....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
束ね髪で、窶々しいが、(その姿のゆうにやさしく、色の清げに美しさは、古井戸を且つ
蔽いし卯の花の雪をも欺きぬ。……類なき艶色、前の日七尾の海の渡船にて見参らせし女....
「活人形」より 著者:泉鏡花
ぎょっとして、四辺を見廻し、人形の被を取って、下枝にすっぽりと打被せ、己が所業を
蔽い隠して、白刃に袂を打着せながら洋燈の心を暗うする、さそくの気転これで可しと、....