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薄い
「薄い〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
薄いの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「カルメン」より 著者:芥川竜之介
ると、……」
「駄目《だめ》だよ、君、それを飲んじゃ。」
僕はT君に注意した。
薄い光のさしたグラスの中にはまだ小さい黄金虫《こがねむし》が一匹、仰向《あおむ》....
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
抽斗《ひきだし》の金具も一見|小綺麗《こぎれい》に出来上っていた。が、実は羅紗も
薄いし、抽斗も素直にあいたことはなかった。これは彼の机よりも彼の家の象徴だった。....
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
でございますが、至って素直な、はにかみ易い――その代りまた無口過ぎて、どこか影の
薄いような、寂しい生れつきでございました。が、私には似たもの夫婦で、たといこれと....
「十円札」より 著者:芥川竜之介
を止《と》めた物売りの前へ歩み寄った。緑いろの鳥打帽《とりうちぼう》をかぶった、
薄い痘痕《あばた》のある物売りはいつもただつまらなそうに、頸《くび》へ吊《つ》っ....
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
の抜けた丸髷《まるまげ》に、小紋《こもん》の羽織の袖《そで》を合せた、どこか影の
薄い女の顔へ、じっと眼を注いでいた。
「私《わたくし》は――」
女はちょいとた....
「湖南の扇」より 著者:芥川竜之介
るかがわからなかった。けれども忽《たちま》ち彼の顔に、――就中《なかんずく》彼の
薄い眉毛《まゆげ》に旧友の一人を思い出した。
「やあ、君か。そうそう、君は湖南の....
「首が落ちた話」より 著者:芥川竜之介
自分や兄弟たちの姿を探して見た。が、そこに人らしいものの影は一つもない。ただ色の
薄い花と葉とが、ひっそりと一つになって、
薄い日の光に浴している。これは空間を斜《....
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
こ一週間ばかりのお律の容態《ようだい》を可成《かなり》詳細に説明した。慎太郎には
薄い博士の眉《まゆ》が、戸沢の処方《しょほう》を聞いた時、かすかに動いたのが気が....
「寒さ」より 著者:芥川竜之介
んがんきょう》をかけた宮本はズボンのポケットへ手を入れたまま、口髭《くちひげ》の
薄い唇《くちびる》に人の好《い》い微笑を浮べていた。
「堀川君。君は女も物体だと....
「蜃気楼」より 著者:芥川竜之介
。それは砂止めの笹垣《ささがき》を後ろに海を眺めている男女だった。尤《もっと》も
薄いインバネスに中折帽をかぶった男は新時代と呼ぶには当らなかった。しかし女の断髪....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
幸《さいわい》、部落の往来を独りぶらぶら歩いていると、誰か笛を吹きすさびながら、
薄い靄《もや》の下《お》りた中を、これも悠々と来かかるものがあった。野蛮《やばん....
「少年」より 著者:芥川竜之介
太郎は考えずとも好《い》い、漁夫の着物は濃い藍色《あいいろ》、腰蓑《こしみの》は
薄い黄色《きいろ》である。ただ細い釣竿《つりざお》にずっと黄色をなするのは存外《....
「手紙」より 著者:芥川竜之介
やいています。そこへ庭の葉桜《はざくら》の枝から毛虫が一匹転げ落ちました。毛虫は
薄いトタン屋根の上にかすかな音を立てたと思うと、二三度体をうねらせたぎり、すぐに....
「点鬼簿」より 著者:芥川竜之介
襟巻と云うものを用いたことはない。が、特にこの夜だけは南画の山水か何かを描いた、
薄い絹の手巾《ハンケチ》をまきつけていたことを覚えている。それからその手巾には「....
「追憶」より 著者:芥川竜之介
妙に寂しさを感じた。しかし格別「今に見ろ」という勇気の起こることは感じなかった。
薄い藍色に澄み渡った空には幾つかの星も輝いていた。僕はこれらの星を見ながら、でき....