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薄む
「薄む〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
薄むの前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「両国の秋」より 著者:岡本綺堂
せたが、一座のかしらのお絹が今あわただしく脱いだ舞台の衣裳は、袂《たもと》の長い
薄むらさきの紋付きの帷子《かたびら》で、これは見るからに涼しそうであった。 白....
「玉藻の前」より 著者:岡本綺堂
にそこを逃げて行ってしまった。頼長はまだそこに立っている玉藻には眼もくれないで、
薄むらさきの霞のうちに暮れかかる春の夕空を静かに打ち仰いでいた。嵐が少し吹き出し....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
きを訊こうとはしなかった。 その日の午後である。 旧暦二月のなかばの春の空は
薄むらさきに霞んで、駿河町《するがちょう》からも富士のすがたは見えなかった。その....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
薄縁をしいて、新聞を読んでいた。 狭い庭にはゆうべの雨のあとが乾かないで、白と
薄むらさきと柿色とをまぜ栽えにした朝顔ふた鉢と、まだ葉の伸びない雁来紅の一と鉢と....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
梢を隔てて沙翁紀念劇場の高い塔が丁度かの薄紅い雲のしたに聳えています。その塔には
薄むらさきの藤の花がからみ付いていることを、私は昼のうちに見て置きました。 船....
「栗の花」より 著者:岡本綺堂
の梢を隔てて沙翁紀念劇場の高い塔が丁度かの薄紅い雲の下に聳えています。その塔には
薄むらさきの藤の花がからみ付いていることを、私は昼のうちに見て置きました。 船....
「海亀」より 著者:岡本綺堂
いている桔梗のひと枝を切り取った。どこやらでひぐらしの声がまたきこえた。 彼は
薄むらさきの花をながめながら又話し出した。 「君も知っている通り、浜辺の砂地には....
「水鬼」より 著者:岡本綺堂
霊という名を冠らせたかというと、所詮はその花と葉との形から来たらしい。花は薄白と
薄むらさきの二種あって、どれもなんだか曇ったような色をしている。ことにその葉の形....
「秋草」より 著者:島崎藤村
い。そのうちに、紅と藍色とのまじったものを基調の色素にして瑠璃にも行けば柿色にも
薄むらさきにも行き、その極は白にも行くような花の顔がほのかに見えて来る。物数寄な....
「小説 円朝」より 著者:正岡容
すぐさまそれを実行した。 まず、黒羽二重五つところ紋の紋付をしつらえ、白地へ
薄むらさき杏葉牡丹《ぎょうようぼたん》を織りなした一本|独鈷《どっこ》の帯しめた....
「郊外生活の一年」より 著者:岡本綺堂
なしているときは、かの向日葵などと一様に、寧ろ男性的の雄大な趣を示すものである。
薄むらさきの小さい花が一つにかたまって、青い大きい葉の蔭から雲のようにたなびき出....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
国とは信じられぬほど、人の顔までが暢んびりみえる。 葛城 金剛 も、今日は
薄むらさきの奥にいて、ひどく遠くなもののように霞んでいた。 山腹や麓の部落には....