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薄ら寒い
「薄ら寒い〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
薄ら寒いの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「玄鶴山房」より 著者:芥川竜之介
こう云う「離れ」にも聞えて来るものは植え込みの竹の戦《そよ》ぎだけだった。甲野は
薄ら寒い静かさの中にじっと玄鶴を見守ったまま、いろいろのことを考えていた。この一....
「寒さ」より 著者:芥川竜之介
は霜曇りの空の下《した》に、たった一つ取り残された赤革の手袋の心を感じた。同時に
薄ら寒い世界の中にも、いつか温《あたたか》い日の光のほそぼそとさして来ることを感じた。
(大正十三年四月)....
「早春」より 著者:芥川竜之介
ひっそりしている。看守《かんしゅ》さえ今日《きょう》は歩いていない。その中にただ
薄ら寒い防虫剤《ぼうちゅうざい》の臭《にお》いばかり漂《ただよ》っている。中村は....
「将軍」より 著者:芥川竜之介
、太陽の見える風景だった。それらは皆電燈の光に、この古めかしい応接室へ、何か妙に
薄ら寒い、厳粛《げんしゅく》な空気を与えていた。が、その空気はどう云う訣《わけ》....
「或る女」より 著者:有島武郎
だ。部屋《へや》の中は盛んな鉄びんの湯気《ゆげ》でそう寒くはないけれども、戸外は
薄ら寒い日和《ひより》になっているらしかった。葉子はぎごちない二人《ふたり》の間....
「三つのなぜ」より 著者:芥川竜之介
出したり、油の絵具の調合を考えたり、胃袋の鳴るのを感じたりしていた。 最後に或
薄ら寒い朝、ファウストは林檎を見ているうちに突然林檎も商人には商品であることを発....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
性分だから、どうにも仕方がない。独りがいい。独りで気儘に動いているのが一番いい。
薄ら寒い早春の夜気が、鉄橋の下のレールの上から吹き上ってきて、ひしひしと背中に浸....
「銀座幽霊」より 著者:大阪圭吉
っても、なにか間違いの起りそうな、変な気持のする晩のこと、宵の口から吹きはじめた
薄ら寒い西の風が、十時頃になってふッと止まってしまうと、急に空気が淀んで、秋の夜....
「湯女の魂」より 著者:泉鏡花
し、打縦いでお茶菓子の越の雪、否、広袖だの、秋風だの、越の雪だのと、お愛想までが
薄ら寒い谷川の音ももの寂しい。 湯上りで、眠気は差したり、道中記を記けるも懶し....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
うも行かんが、清水があって、風通しの可いせいか、離座敷には蚊は居ません。で、ちと
薄ら寒いくらいだから――って……敷くのを二枚と小掻巻。どれも藍縞の郡内絹、もちろ....
「トロッコ」より 著者:芥川竜之介
まっている場所もあった。その路をやっと登り切ったら、今度は高い崖の向うに、広広と
薄ら寒い海が開けた。と同時に良平の頭には、余り遠く来過ぎた事が、急にはっきりと感....
「小杉未醒氏」より 著者:芥川竜之介
も南画も、同じように物柔かである。が、決して軽快ではない。何時も妙に寂しそうな、
薄ら寒い影が纏わっている。僕は其処に僕等同様、近代の風に神経を吹かれた小杉氏の姿....
「恨みの蠑螺」より 著者:岡本綺堂
戸を出るときはいい天気で、道中はもう暑かろうなどと言っていたのだが、けさは曇って
薄ら寒い。」と、義助は草鞋の緒をむすび直しながら言った。 こんな問答をぬすみ聞....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
のを借りやあがった、襖の引手|一個引剥しても、いっかど飲代が出来るなんと思って、
薄ら寒い時分です、深川のお邸があんなになりました、同一年の秋なんで。 その十畳....
「女の決闘」より 著者:オイレンベルクヘルベルト
の草がほとんど土を隠す程茂っていて、その上に荷車の通った轍の跡が二本走っている。
薄ら寒い夏の朝である。空は灰色に見えている。道で見た二三本の立木は、大きく、不細....