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薄り
「薄り〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
薄りの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
を振って、払い、はらい、 「この煙とも霧とも靄とも分らない卍巴の中に、ただ一人、
薄りとあなたのお姿を見ました時は、いきなり胸で引包んで、抱いてあげたいと思いまし....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
ありませんや。真白な手が二つ、悚然とするほどな婦が二人……もうやがてそこら一面に
薄り白くなった上を、静に通って行くのでございます。正体は知れていても、何しろそれ....
「開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
階段へ、上から、黒く落ちて、鳥影のように映った。が、羽音はしないで、すぐその影に
薄りと色が染まって、婦の裾になり、白い蝙蝠ほどの足袋が出て、踏んだ草履の緒が青い....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
扱帯の結んだ端、羽織の裏、褄はずれ、目立たないで、ちらちらと春風にちらめく処々に
薄りと蔭がさす、何か、もの思か、悩が身にありそうな、ぱっと咲いて浅く重る花片に、....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
けよ。……(流れは見さっしゃる通りだ)……」 今もおなじような風情である。――
薄りと廂を包む小家の、紫の煙の中も繞れば、低く裏山の根にかかった、一刷灰色の靄の....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
月の影に照らし出されたのは、小さい白い塊である。 その描けるがごとき人の姿は、
薄りと影を引いて、地の上へ黒い線が流るるごとく、一文字に広場を横切って、竹藪を離....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
いたが、やがてこの座敷の前の縁、庭樹を籠めて何となく、隣家のでもあるか蚊遣の煙の
薄りと夏の夕を染めたる中へ、紗であろう、被布を召した白髪を切下げの媼、見るから気....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
は一足おくれで、そのあとへ、こけ勘。 ところがね、おかみさん、いざ原場の頂上へ
薄りと火柱が立って、愛吉の姿があらわれたとなる。と、こけ勘はいきせい切って追いあ....
「春昼」より 著者:泉鏡花
、左の方に脊の高い麦畠が、なぞえに低くなって、一面に颯と拡がる、浅緑に美い白波が
薄りと靡く渚のあたり、雲もない空に歴々と眺めらるる、西洋館さえ、青異人、赤異人と....
「第二菎蒻本」より 著者:泉鏡花
に、月影かと見えたのは、廂に釣った箱燈寵の薄明りで、植込を濃く、むこうへぼかして
薄りと青い蚊帳。 ト顔を見合せた。 急に二人は更ったのである。 男が真中の....
「多神教」より 著者:泉鏡花
薄日の射すのが、……あれから見ると、近間ではあるが、もみじに雨の降るように、こう
薄りと光ってな、夕日に時雨が来た風情じゃ。朝夕存じながら、さても、しんしんと森は....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
目を遣って、密と片頬笑して声を潜めた。 「串戯じゃありませんぜ。ね、それ、何だか
薄りと美しい五色の霧が、冷々と掛るようです。……変に凄いようですぜ。亀が昇天する....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
吹いて、水の薫が芬とした時、――膳の上の冷奴豆腐の鉢の中へ、その骨のどの辺かが、
薄りと浮いて出た。 それから前は、……寝しなに細君が串戯に、 「夜中に出掛けま....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
廂合の幕から倒にぶら下がり、見越入道は誂えた穴からヌッと出る。雪女は拵えの黒塀に
薄り立ち、産女鳥は石地蔵と並んでしょんぼり彳む。一ツ目小僧の豆腐買は、流灌頂の野....
「鷭狩」より 著者:泉鏡花
幽霊を消しながら、やっぱり悚然として立淀んだ。 洗面所の壁のその柱へ、袖の陰が
薄りと、立縞の縞目が映ると、片頬で白くさし覗いて、 「お手水……」 と、ものを....