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薄倖
「薄倖〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
薄倖の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「虚構の春」より 著者:太宰治
と傲語《ごうご》してみる。彼は偉大なのらくら者、悒鬱《ゆううつ》な野心家、華美な
薄倖児《はっこうじ》である。彼を絶えず照した怠惰の青い太陽は、天が彼に賦与《ふよ....
「東海道五十三次」より 著者:岡本かの子
、一つは年齢の若い遊女にそういうロマンスが多いですね」 「じゃ、千手もまだ重衡の
薄倖《はっこう》な運命に同情できるみずみずしい情緒のある年頃だったというわけね」....
「家霊」より 著者:岡本かの子
けの髪を総髪に撫《な》でつけ、立派な目鼻立ちの、それがあまりに整い過ぎているので
薄倖を想わせる顔付きの老人である。その儒者風な顔に引較べて、よれよれの角帯に前垂....
「食魔」より 著者:岡本かの子
なり、下町の娘たちを引受けて嫁入り前の躾をする私塾を開いていた。伯母も身うちには
薄倖の女で、良人には早く死に訣れ、四人ほどの子供もだんだん欠けて行き、末の子の婚....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
て、恐らく法水との約束を果そうとしたことが、事件中一貫して、不運を続け来ったこの
薄倖の処女に、最後の悲劇をもたらせたのではないかと推測されたのである。
こうし....
「田舎教師」より 著者:田山花袋
人のいい父親と弱々しく情愛の深い母親とを持ったこの身は、生まれながらにしてすでに
薄倖の運命を得てきたのである。こう思うと、例のセンチメンタルな感情が激しく胸に迫....
「亮の追憶」より 著者:寺田寅彦
や一門の厚い感謝の念は、故人の記憶の消えない限り消える事はあるまい。 年取って
薄倖な亮の母すらも「亮は夭死はしたが、これほどまでに皆様から思っていただけば、決....
「社会時評」より 著者:戸坂潤
は本当は一人もいない筈である。今年の六月初めには、公娼の自由外出が許可されたが、
薄倖児の救済はそれにも増して吾々自身に希望を与えるものがある。尤もその反作用とし....
「カラマゾフの兄弟」より 著者:ドストエフスキーフィヨードル・ミハイロヴィチ
たら証明ができましょうか、どうしたら信念が得られましょうか? ほんとにわたくしは
薄倖《ふしあわせ》でございます。じっと立ってぐるりを眺めましても、みんな、たいて....
「運命のままに」より 著者:豊島与志雄
島を訪ねてやろうと思った。そう思う私の心には何等の私心もなかった。私の心にはただ
薄倖な一女性の魂と、それからそれと交渉のある自分の運命とが、映じていた。 私は....
「道化役」より 著者:豊島与志雄
、一半の責任は信子の耳にあるように思われる。千代次は薄い素直な耳朶を持っていた。
薄倖そうな可憐な耳朶が島田の鬢からのぞいてるのを、私は彼女の頼り無い存在の象徴の....
「孤独者の愛」より 著者:豊島与志雄
、美しければ美しいほどよい。 そのひとが、なぜ男嫌いになったのか。なにか淋しい
薄倖な生れつきなのであろうか。悲しい星の下に生れたのであろうか。或いは、心に深い....
「光り合ういのち」より 著者:倉田百三
秀才と思った。その後だ、この友からの手紙に、 「君は順境の幸運児なり。僕は逆境の
薄倖児なり」 とあったのは。私はそれを読んで、胸を打たれた。当座はこの友のこと....
「すみだ川」より 著者:永井荷風
をも忘れ果ててしまう時、せめてはわが小さきこの著作をして、傷ましき時代が産みたる
薄倖《はっこう》の詩人がいにしえの名所を弔《とむら》う最後の中《うち》の最後の声....
「彼等流浪す」より 著者:小川未明
漂浪の詩人に、郷土のなつかしまれたのを知る。レエルモントフのコウカサスに於ける、
薄倖の革命詩人、レヴィートフの中央ロシヤの平原に於けるそれであった。 彼等は、....