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薄寒い
「薄寒い〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
薄寒いの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「両国の秋」より 著者:岡本綺堂
国にも、暮れゆく秋の色と匂いとが漲《みなぎ》っているように見えるのが、このごろの
薄寒い朝の景色であった。その青物の露を蹈《ふ》んで、林之助は橋を渡った。 「あら....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
ねえんですよ。ふとん一枚ねえんですよ。もう十日もたちゃ霜が降りようってえいうこの
薄寒い秋口に、毎晩毎晩何を着て寝ていたんでしょうね。え? ちょいと。ね、だんな!....
「動かぬ鯨群」より 著者:大阪圭吉
を取巻いて、人々は思い出したように酒を飲んだ。冷くさめ切った酒だった。 外には
薄寒い風が、ヒューヒューと電線を鳴らして、夜漁の船の発動機がタンタンタンタンと聞....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
かの柳の大樹が次から次へと伐り倒された。それは明治三十四年の秋である。涼しい風が
薄寒い秋風に変って、ここの柳の葉もそろそろ散り始める頃、むざんの斧や鋸がこの古木....
「青蛙堂鬼談」より 著者:岡本綺堂
にもいかないので、まずそのままにしておくと、ある秋の宵である。 この日は昼から
薄寒い雨がふりつづいて、渡しを越える人も少なかったが、暮れてはまったく人通りも絶....
「出家とその弟子」より 著者:倉田百三
のですから。 左衛門 (寝床の上にすわる)わしが鶏をつぶしている夢を見たのだよ。
薄寒いような竹やぶの陰だったがね。わしはそこらにころがっている材木の丸太に片足か....
「天馬」より 著者:金史良
を帯びて正面に塞がるけれど、立ち所に又激しい砂風におおいまくられてしまう。何だか
薄寒い日である。今に月でも出そうな朝であると、彼の心の一隅に別な人間がいて思うよ....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
たあとだから、この雲の累った空合では、季節で蒸暑かりそうな処を、身に沁みるほどに
薄寒い。…… 木の葉をこぼれる雫も冷い。……糠雨がまだ降っていようも知れぬ。時....
「番町皿屋敷」より 著者:岡本綺堂
あげていると、もう西へ廻りかかった日の光は次第に弱くなって、夕暮を誘い出すような
薄寒い風にふるえる花びらが音もなしに落ちた。その冷たい花の匂いがお菊の身に沁みる....
「鬼退治」より 著者:下村千秋
寺という寺があった。山を少し登りかけた深い杉森の中にあって、真夏の日中でもそこは
薄寒いほど暗くしんとしていた。この寺には年寄った住職と小坊主一人が住んでいたが、....
「小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
確かに得意の時節でなければならない。小坂部もほほえみながら聴いていると、春もまだ
薄寒い夕暮れの風が天から吹きおろして来て、高い天主閣の甍をゆすって通った。いつも....
「明治劇談 ランプの下にて」より 著者:岡本綺堂
が城北の大紙房という村落に舎営している時のことであった。満洲の秋は早いので、もう
薄寒い風の吹き出した夕暮に、内地から郵便物が到着したという通知があったので、わた....
「御堀端三題」より 著者:岡本綺堂
かの柳の大樹が次から次へと伐り倒された。それは明治三十四年の秋である。凉しい風が
薄寒い秋風に変って、ここの柳の葉もそろそろ散り始める頃、むざんの斧や鋸がこの古木....
「舞子より須磨へ」より 著者:小川未明
舞子の停車場に下りた時は夕暮方で、松の木に
薄寒い風があった。誰も、下りたものがなかった。松の木の下を通って、右を見ても、左....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
瓜の山だ。丘だ、煙突だ、レールだ、そして防波堤だ、浮標だ。 波を蹴立てて、風の
薄寒い港内を一まわりすると、ランチが岸へ着いた。横浜を出て四日ぶりで陸地を踏むの....