薄氷[語句情報] »
薄氷
「薄氷〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
薄氷の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「日光小品」より 著者:芥川竜之介
戦場が原
枯草の間を沼のほとりへ出る。
黄泥《こうでい》の岸には、
薄氷が残っている。枯蘆《かれあし》の根にはすすけた泡《あぶく》がかたまって、家鴨....
「のんきな患者」より 著者:梶井基次郎
を舐《な》めはじめた。そこへ行けばもう吉田にはどうすることもできない場所である。
薄氷を踏むような吉田の呼吸がにわかにずしりと重くなった。吉田はいよいよ母親を起こ....
「夜行巡査」より 著者:泉鏡花
き水面に烈《はげ》しき泡《あわ》の吹き出ずるは老夫の沈める処《ところ》と覚しく、
薄氷は亀裂《きれつ》しおれり。 八田巡査はこれを見て、躊躇《ちゅうちょ》するも....
「蛇の花嫁」より 著者:大手拓次
に身をなげて このながながし 病気《いたつき》の なやみの刺《とげ》をぬぎすてむ
薄氷《うすらひ》の溶くる春のあをさに 白き芥子の花 わがおもひのいづみ かの....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
上に、赤い矢印で示された縁の下の潜り穴が見つかった。そこで両手と膝頭とをついて、
薄氷の張っているらしい大地のツーンとする冷たさを痛く感じながら、穴を潜って床下に....
「白蛇の死」より 著者:海野十三
分に告げるまでも無く半殺しの目にあわされるのは言うまでも無かった。 然し、幸い
薄氷を踏む思いの長い三十分は、どうやら無事に過ぎたらしい。やがて足音を忍ぶように....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
女の帯の端がみえた。不思議に思って覗いてみると、その帯は紅い尾をひいたように池の
薄氷のなかに沈んでいるのであった。試みにその帯の端をつかんで引くと、それは人間の....
「槍ヶ岳第三回登山」より 著者:小島烏水
裂して、その切截面の高さは、およそ二丈もあろう、右へ除け左へ避けて、思わずも雪の
薄氷の上を行くと、パリパリと氷柱が折れるような音がするので、足下を見ると、大きな....
「青春論」より 著者:坂口安吾
のは余りに苛酷なことであり、血気にはやり名誉に燃える彼とは云え、その一々の試合の
薄氷を踏むが如く、細心周到万全を期したが上にも全霊をあげた必死の一念を見れば、僕....
「青鬼の褌を洗う女」より 著者:坂口安吾
際は自分の行路に自信がなくて、営業のこと、恋のこと、日常の一々に迷い、ぐらつき、
薄氷を踏むようにして心細く生きているのを私は知りぬいており、私は無口だから優しい....
「我が人生観」より 著者:坂口安吾
をえがいてガスをふいているのに似ている。まったく火山をだいでいるのと異ならない。
薄氷をふむ思いである。身体の屈折によほど気をつけないと、いきなりグッと痛んできそ....
「安吾の新日本地理」より 著者:坂口安吾
三ツが同時に行われているものだね。私の女房も、旅館の女中も、私が仕事をはじめると
薄氷をふむ思いになるらしく、みんな部屋へはいるとき、ひきつッた顔でオドオドしてい....
「鴎外の思い出」より 著者:小金井喜美子
ゞ。あらば御聞せ下され。 其まゝに千代の鏡と氷るなり 結びあまりし今朝の
薄氷 大きみの千世の例と老がつむ 心の根芹もえやしつらん など、思ひ候ま....
「瘤」より 著者:犬田卯
。いざ清算となれば、それではどれほどの補償金が背負わされるか分ったものではない。
薄氷の上に建てられた楼閣のような組合の内幕から、それに関連して、Sという大字の連....
「秘密の相似」より 著者:小酒井不木
ることもありませんでしたから、私はほっとしたので御座います。 かような、いわば
薄氷を踏むような一夜が明けるなり、私は逃げるようにして実家に戻りました。両親は驚....