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「薄紙〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

薄紙の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
んきに自分の身の上を考えていた。いわば悠々《ゆうゆう》閑々と澄み渡った水の隣に、薄紙|一重《ひとえ》の界《さかい》も置かず、たぎり返って渦《うず》巻き流れる水が....
」より 著者:岡本かの子
いとは思う。しかし呼ぶことだけは悲しい楽しさだった。 「お母さあん、お母さあん」薄紙が風に慄えるような声が続いた。 「はあい」 と返事をして現在の生みの母親が....
地中魔」より 著者:海野十三
するうちに東の空に次第に紅がさしてきた。やがて夜明である。 ほのぼのとあたりが薄紙を剥ぐようにすこしずつ見えて来た。 波がザブリザブリと石垣を洗っている。そ....
神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
で、早速一粒を投じましたところ……」 「ふうむ、やっぱり快癒したか」 「さながら薄紙を剥ぐがよう」 「名薬! 名薬! ……欲しいものだ!」 「実は殿にはこれほど....
旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
みへひれ伏しました。 天下、この御定紋にかかっては、草木の風に靡く比ではない。薄紙のようになって豊後守たちが平伏している間を、うやうやしく京弥に捧げ持たせなが....
鉄面皮」より 著者:太宰治
られ、十日にはほとんど御|危篤と拝せられましたが、その頃が峠で、それからは謂わば薄紙をはがすようにだんだんと御悩も軽くなってまいりました。忘れもしませぬ、二十三....
錯覚数題」より 著者:寺田寅彦
のの価値をおとすだけだからである。 五 紙獅子 銀座や新宿の夜店で、薄紙をはり合わせて作った角張ったお獅子を、卓上のセルロイド製スクリーンの前に置き....
極楽」より 著者:菊池寛
い道路を歩いたか判らなかった。兎に角、行手のほの/″\した闇が、ほんの僅かずつ、薄紙を剥ぐように、僅かずつ白み始めて来た。おかんは、そうなるに従って、尚更足を早....
海神別荘」より 著者:泉鏡花
侍女七 蓮の糸を束ねましたようですから、鰐の牙が、脊筋と鳩尾へ噛合いましても、薄紙|一重透きます内は、血にも肉にも障りません。 侍女三 入道も、一類も、色を漁....
艸木虫魚」より 著者:薄田泣菫
G氏が訪ねて来た。そして手土産だといって梨を一籠くれた。梨は一つずつ丁寧に二重の薄紙に包まれていたが、その紙をめくってみるとなかからは黄熟した肌の滑っこい、みず....
小公女」より 著者:菊池寛
鹸皿を雪花石膏の水盤に見たてて、薔薇の花を盛りました。それから毛糸を包んだ紅白の薄紙で、お皿を折り、残った紙と花とは、蝋燭台を飾るのに用いました。セエラは一歩退....
葛の葉狐」より 著者:楠山正雄
ている蛇と蛙を見つけて、追い出して、捨てました。するとまもなく天子さまの御病気は薄紙をへぐように、きれいに治ってしまいました。 天子さまは大そう阿倍の童子の手....
現代小説展望」より 著者:豊島与志雄
残っている。モリはあれを吐き出すんだ。今ではオリーヴの味が分るらしい。オレンジは薄紙に包んで枝編み籠に入れて荷造りされる。シトロンも同様だ。あのシトロン君はまだ....
女心の強ければ」より 著者:豊島与志雄
った。出発して、そして何処に到るかは、ただ神のみぞ知る。 千代乃は、頬の皮膚を薄紙のように張りきり、眼に深い光りを漲らして、長谷川を見つめた。 「覚悟していら....
怪異黒姫おろし」より 著者:江見水蔭
れた。 それから、印籠の二重底から取出した切図三葉をも譲られた。いずれも雁皮の薄紙に細かく書いて有るのであった。 「や、や、あの山神の祠の台座、後面の石垣のま....