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薔薇色
「薔薇色〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
薔薇色の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
た今日、二十年の昔をふり返って見れば、彼を苦しめた中学の校舎は寧《むし》ろ美しい
薔薇色《ばらいろ》をした薄明りの中に横《よこた》わっている。尤《もっと》もグラウ....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
僕は眼でもって、マスミの頬を打擲した。眼でもって、微かに白い歯を覗かせた可愛いい
薔薇色の唇を抓りあげた。それでも物足りなかった。夜具を跳ねのけて、彼女の細い頸を....
「金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
一端にロマネスクの半円|祠堂があって、一本一本の円柱は六月の陽を受けて鮮かに紫|
薔薇色の陰をくっきりつけ、その一本一本の間から高い蒼空を透かしていた。白雲が遥か....
「河明り」より 著者:岡本かの子
起しつつ、悠久に蒼海を流れ行く氷山である。そのハレーションに薄肉色のもあるし、黄
薔薇色のもある。紫色が爆ぜて雪白の光茫を生んでいるものもある。私は星に一々こんな....
「奇賊は支払う」より 著者:海野十三
から三十分間後に、繭子夫人は無事苅谷邸へ帰着したのだった。氏は安心したし、夫人は
薔薇色の頬を輝かして夫君に抱きついた。 これで繭子夫人誘拐事件はもうすっかり片....
「火葬国風景」より 著者:海野十三
と急ったが、結局恋の凱歌は八十助の方に揚がった。八十助と露子とが恋の美酒に酔って
薔薇色の新家庭を営む頃、失意のドン底に昼といわず夜といわず喘ぎつづけていた鼠谷仙....
「巴里祭」より 著者:岡本かの子
化粧を見せて空に美しい輪廊を際立たしている女の横顔のようだ。その空はまた一面に紫
薔薇色の焔を挙げて深まろうとしている。闇を掻き乱そうとしている。黄、赤、青のネオ....
「真夏の夢」より 著者:有島武郎
ら火の立ち登る柱廊下の上にそびえた黄金の円屋根に夕ぐれの光が反映って、島の空高く
薔薇色と藍緑色とのにじがかかっていました。 「あれはなんですか、ママ」 おかあ....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
ッフェへ避難することにした。 それは「避難」に違いなかった。僕はこのカッフェの
薔薇色の壁に何か平和に近いものを感じ、一番奥のテエブルの前にやっと楽々と腰をおろ....
「久米正雄」より 著者:芥川竜之介
杯盤狼藉の間に、従容迫らない態度などは何とはなしに心憎いものがある。いつも人生を
薔薇色の光りに仄めかそうとする浪曼主義。その誘惑を意識しつつ、しかもその誘惑に抵....
「不周山」より 著者:井上紅梅
なくなった。 彼女は、この肉色の天と地との間を海辺へと走り、全身の曲線を全く薄
薔薇色の光の海のなかに融け消えて、下半身は真白に彩られ、波は驚き、規則正しく起伏....
「初雪」より 著者:秋田滋
顫いをした。それからにッこり笑った。そして、遠くエストゥレルの群峰が夕陽をあびて
薔薇色に染っているのを眺めていた。彼女はまた、自分の頭の上に大きく拡がっている、....
「百喩経」より 著者:岡本かの子
ばかりの銀器に映る。 庭の桜と梨の花が息を詰めて覗く。蒼空を下から持上げようと
薔薇色の雲が地平から頭を押し出して見たが重くて駄目。 「こんどは、マルマレードを....
「ドーヴィル物語」より 著者:岡本かの子
――だしぬけに部屋の扉が開いた。 ――御免なさい。あたし、お部屋を間違えたのよ。
薔薇色に黄の光沢が滑る部屋着の女が入って来た扉口を素早く締め彼に近づき乍ら早口に....
「狂人日記」より 著者:秋田滋
その刄の方で釣師の頭をひと撃ちで割った。頭から血が流れ出した。脳漿が入り混った、
薔薇色の血! それは緩やかに川の中に流れ込んだ。私は落著いてゆるゆるとそこを去っ....