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薫
「薫〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
薫の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「るしへる」より 著者:芥川竜之介
終を心の中《うち》に繰返しつつ、異国より移し植えたる、名も知らぬ草木《くさき》の
薫《かぐわ》しき花を分けて、ほの暗き小路を歩み居しが、ふと眼《まなこ》を挙げて、....
「或る女」より 著者:有島武郎
な娘の出た事を、できるだけ世間《せけん》に知られまいとした。女子教育とか、家庭の
薫陶とかいう事をおりあるごとに口にしていた親佐は、その言葉に対して虚偽という利子....
「私の父と母」より 著者:有島武郎
ろへ遠島された。それが父の七歳の時ぐらいで、それから十五か十六ぐらいまでは祖父の
薫育《くんいく》に人となった。したがって小さい時から孤独で(父はその上一人子であ....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
偏に恐入ってお辞儀をする。 「御免なさいよ。」 と優い声、はッと花降る留南奇の
薫に、お源は恍惚として顔を上げると、帯も、袂も、衣紋も、扱帯も、花いろいろの立姿....
「最終戦争論」より 著者:石原莞爾
寺をたくさん造った時代、つまり立派なお寺を建て、すばらしい仏像を本尊とし、名香を
薫じ、それに綺麗な声でお経を読む。そういう仏教芸術の力によって満足を得て行こうと....
「海異記」より 著者:泉鏡花
隠るるので。 留守はただ磯吹く風に藻屑の匂いの、襷かけたる腕に染むが、浜百合の
薫より、空燻より、女房には一際床しく、小児を抱いたり、頬摺したり、子守唄うとうた....
「海神別荘」より 著者:泉鏡花
風、磯の香、海松、海藻の、咽喉を刺す硫黄の臭気と思いのほか、ほんに、清しい、佳い
薫、(柔に袖を動かす)……ですが、時々、悚然する、腥い香のしますのは?…… 女房....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
のある趣に似たが、風情は勝る、花の香はその隈から、幽に、行違う人を誘うて時めく。
薫を籠めて、藤、菖蒲、色の調う一枚|小袖、長襦袢。そのいずれも彩糸は使わないで、....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
…どこまでも雪の上を。――月村さん、あなたのですよ。」 「いいえ、私。」 「良い
薫もするようです。どこかに梅かしら。それ、そうですとも。……頭巾をこぼれて、黒く....
「縁結び」より 著者:泉鏡花
と謙造の胸につけた、遠慮の眉は間をおいたが、前髪は衣紋について、襟の雪がほんのり
薫ると、袖に縋った手にばかり、言い知らず力が籠った。 謙造は、その時はまださま....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
ややあって、はらはらと衣の音信。 目前へ路がついたように、座敷をよぎる留南奇の
薫、ほの床しく身に染むと、彼方も思う男の人香に寄る蝶、処を違えず二枚の襖を、左の....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
残燈の灯に青く染まって、枕に乱れた鬢の毛も、寝汗にしとど濡れたれば、襟白粉も水の
薫、身はただ、今しも藻屑の中を浮び出でたかの思がする。 まだ身体がふらふらして....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
ぬ。で、止むを得ないから、われ等は多くの中で、一番ましな人物を選び、これに不断の
薫陶を加えつつ、曲りなりにも所期の仕事を遂行せんと覚悟するに至ったのである。われ....
「怨霊借用」より 著者:泉鏡花
をその……嗅ぎますようで、はい。」 座には今、その白梅よりやや淡青い、春の李の
薫がしたろう。 うっかり、ぷんと嗅いで、 「不躾け。」 と思わずしゃべった。....
「葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
時の風情。 十三 橘之助は垢の着かない綺麗な手を胸に置いて、香の
薫を聞いていたが、一縷の煙は二条に細く分れ、尖がささ波のようにひらひらと、靡いて....