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藤紫
「藤紫〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
藤紫の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「星座」より 著者:有島武郎
るのを見つけだすと、慌《あわ》てたように帯の間にたくしこんで、胸をかたく合せた。
藤紫の半襟が、なるべく隠れるように襟元をつめた。束髪にはリボン一つかけていないの....
「蒼穹」より 著者:梶井基次郎
にはながらく動かないでいる巨《おお》きな雲があった。その雲はその地球に面した側に
藤紫色をした陰翳《いんえい》を持っていた。そしてその尨大《ぼうだい》な容積やその....
「玉藻の前」より 著者:岡本綺堂
。相手は誰じゃ。明かされぬか」 「お身さまの前では申し上げられませぬ」と、玉藻は
藤紫の小袿《こうちぎ》の袖で切《せつ》ない胸をかかえるように俯向いた。嵐は桜の梢....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
た。 真白なリボンに、黒髪の艶は、金蒔絵の櫛の光を沈めて、いよいよ漆のごとく、
藤紫のぼかしに牡丹の花、蕊に金入の半襟、栗梅の紋お召の袷、薄色の褄を襲ねて、幽か....
「クララの出家」より 著者:有島武郎
子の上に昨夜母の持って来てくれた外の衣裳が置いてあった。それはクララが好んで来た
藤紫の一揃だった。神聖月曜日にも聖ルフィノ寺院で式があるから、昨日のものとは違っ....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
でも含んでいそうな青黒い葉が、重たそうに繁り冠さり合い、その葉陰の所々に、臙脂や
藤紫の斑が点綴されていた。しかし、間もなく灯の中へ、ちょっと馬蓼に似た、見なれな....
「古狢」より 著者:泉鏡花
な、燈籠の絵のように、明保野の入口へ――そこで、うぐいの灯が消えた。 「――
藤紫の半襟が少しはだけて、裏を見せて、繊り肌襦袢の真紅なのが、縁の糸とかの、燃え....
「小春の狐」より 著者:泉鏡花
―そのひとは、厭わしげもなく、親しく曳いて坂を上ったのである。衣の香に包まれて、
藤紫の雲の裡に、何も見えぬ。冷いが、時めくばかり、優しさが頬に触れる袖の上に、月....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
。 瞳の動かぬ気高い顔して、恍惚と見詰めながら、よろよろと引退る、と黒髪うつる
藤紫、肩も腕も嬌娜ながら、袖に構えた扇の利剣、霜夜に声も凜々と、 「……引上げた....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
静に衝と抜けて、早や、しとやかに前なる椅子に衣摺のしっとりする音。 と見ると、
藤紫に白茶の帯して、白綾の衣紋を襲ねた、黒髪の艶かなるに、鼈甲の中指ばかり、ずぶ....
「紅毛傾城」より 著者:小栗虫太郎
ハと上気して、腰を無性にもじもじ回しはじめた。 それから、床着の黄八丈を着て、
藤紫の上衣を重ね、結んだしごきは燃え立つような紅。そのしどけなさ、しどけなく乱れ....
「紅白縮緬組」より 著者:国枝史郎
。下髪にした黒髪が頬に項に乱れているのも憐れを誘って艶かしく、蜀江錦の裲襠の下、
藤紫の衣裳を洩れてろうがましく見ゆる脛の肌は玉のようにも滑らかである。観念の眼を....
「兄妹」より 著者:岡本かの子
ぶっていた。上質の久留米絣の羽織と着物がきちんと揃っていた。妹は紫矢絣の着物に、
藤紫の被布を着ていた。 三月の末、雲雀が野の彼処に声を落し、太陽が赫く森の向う....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
ら。)おいそれものの女中めが、のっけのその京言葉と、朱鷺色の手絡、艶々した円髷、
藤紫に薄鼠のかかった小袖の褄へ、青柳をしっとりと、色の蝶が緑を透いて、抜けて、ひ....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
、かつ銀行に至る。午後、日本商松浦、滝波両店を訪う。当地は桃花すでに散じて、李白
藤紫、春栄を争うを見る。夜に入りて、半輪の明月玻窓を照らすあり。しかして月を北天....