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「虚ろ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

虚ろの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
土曜夫人」より 著者:織田作之助
るンや。あはは……」 章三は三十五歳に似合わぬ豪放な笑いを笑ったが、しかしふと虚ろな響きがあり、おまけに眼だけ笑っていなかった。それが油断のならぬ感じだ。 「....
青春の逆説」より 著者:織田作之助
らしくて気乗りがしなかった。 「野崎、そう悄気るなよ」と、豹一が慰めたが、野崎は虚ろな表情で、しきりに責任感に悩まされていた。そんな野崎の気持がほかの二人にも乗....
世相」より 著者:織田作之助
年振りに会う二人の軽薄な挨拶だった。笑ったが、マダムの窶れ方を見ながらでは、ふと虚ろに響いた。 「なんだ、お知り合いでしたか、丁度よかった。じゃ忘年会ということ....
惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
遊離した状態に在る過去を現在と対立させて、その比較の上に個性の座位を造ろうとする虚ろな企てには厭き果てたのだ。それは科学者がその経験物を取り扱う態度を直ちに生命....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
。 「殺してよ、座間」 マヌエラが、しまいにはそんなことを言いだした。そして、虚ろな、笑いをげらげらとやってみたり、ときどき嫌いなヤンへにッと流眄を送ったりす....
あめんちあ」より 著者:富ノ沢麟太郎
亡しているも同然な彼の心臓は顫《ふる》えた。何らの反動も起らなかった。しかしその虚ろな心《しん》の臓のなかでは、目に見えてない盲目的な颶風《ぐふう》が疾駆し廻っ....
安重根」より 著者:谷譲次
じられる! 柳麗玉 (気味悪そうに)安さん! あたし情けなくなるわ。 安重根 (虚ろに)伊藤がおれを占領するか、おれが伊藤を抹殺するか――自衛だ! 自衛手段だ!....
稲生播磨守」より 著者:林不忘
、気の迷い――。 恐しそうにその刀を下へ置き、次ぎを取り上げる。 奎堂 (虚ろな声で)これは吉相――。 言いかけてまた前の一刀を手にとる。 奎堂 う....
雪の夜」より 著者:小林多喜二
ひっくり返った。低い天井板が飴色にすすけてところどころ煤が垂れていた。 龍介は虚ろな気持で天井を見ながら「ばか」声を出してひくく言ってみた。 「ばか!」少し大....
イオーヌィチ」より 著者:神西清
れは冗談じゃなくって、本当にやって来るかも知れないさ』――そして彼は、この力ない虚ろな希望に身も心もまかせ切って、そのおかげでうっとり酔い心地になってしまった。....
坑鬼」より 著者:大阪圭吉
て、もう見えはじめた事務所の灯のほうへ、なにかまだ解けきらぬ謎を追い求めるような虚ろな視線を、ボンヤリ投げ掛るのであった。 ところが、それから十分もしないうち....
夜光虫」より 著者:織田作之助
でものらんぞ、あはは……」 豹吉はわざと大きく笑ったが、しかし、その笑いはふと虚ろに響き、さすがに狼狽していた。 ガマンの針助……。 この奇妙な名前の男に....
夜の構図」より 著者:織田作之助
はこんなものであろうか。 信吉はふと眉を翳らせて、それが癖の放心しているような虚ろな眼をあげて、きょとんと白い雨足を見ていたが、一つの気分に永く閉じこもること....
霧の中のヨードル」より 著者:中井正一
山のピークは晴れ渡っていた。 数里へだたっている立山の頂上の神社の太鼓の音が、虚ろなほど寂かな空気の中を鮮かに、しかし、かすかに、広く広く空を真っ直ぐにわたっ....
長崎の鐘」より 著者:永井隆
むる原子野を徘徊《はいかい》した。 竹槍が落ちていた。蹴ったら、からんからんと虚ろな音をたてた。拾って空に構えて涙が出た。竹槍と原子爆弾! ああ、竹槍と原子爆....