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蚊柱
「蚊柱〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
蚊柱の前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
さな羽虫《はむし》が集まってうるさく飛び回り、やぶ蚊がすさまじく鳴きたてて軒先に
蚊柱を立てているころだった。しばらく目で来た倉地が、張り出しの葉子の部屋《へや》....
「斗南先生」より 著者:中島敦
を埋め、丁寧に土をかけて、伯父がその上に、白木の印を立てる。黄色く暮れ残った空に
蚊柱の廻る音を聞きながら、三造はその前にしゃがんで手を合わせる。伯父は彼の後に立....
「試験管」より 著者:寺田寅彦
里ではそういう場合に「おらのおととのかむ――ん」という呪文を唱えて頭上に揺曳する
蚊柱を呼びおろしたものである。「おらのおとと」はなんのことかわからないが、この「....
「かんかん虫」より 著者:有島武郎
も海は海だ。風はなくとも夕されば何処からともなく潮の香が来て、湿っぽく人を包む。
蚊柱の声の様に聞こえて来るケルソン市の薄暮のささやきと、大運搬船を引く小蒸汽の刻....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
した。
依然として、森閑とした秋の真昼だ。
江戸のもの音が、去った夏の夕べの
蚊柱《かばしら》のように、かすかに耳にこもるきり、大川の水は、銀灰色《ぎんかいし....
「雑記帳より(Ⅰ)」より 著者:寺田寅彦
たどの映画にも必ず根気よく実に根気よく繰返される退屈な立廻りが、どうも孑※の群や
蚊柱の運動を聨想させる。これを製作する監督、またそれを享楽する映画ファンの忍耐心....
「一枚絵の女」より 著者:国枝史郎
たのであった。 奥州方面へ落ちようとして、三十郎とおきたとは夏の夜の、家の軒へ
蚊柱の立つ時刻に、千住の宿を出外れた。 三十郎は満足であった。明和年間の代表的....
「仇討姉妹笠」より 著者:国枝史郎
んだ。 藤八猿の着ている赤いちゃんちゃんこと、お葉の冠っている白手拭とが、もう
蚊柱の立ち初めている門の、宵闇の中で際立って見えた。 (案内を乞うて見ようかしら....
「巷説享保図絵」より 著者:林不忘
員たちは裏口からでも逃げたらしく、家の中はしいんとしていた。
お高は、夏の宵の
蚊柱がくずれるように、ぶうんと音を発して飛びかわす拳《こぶし》や下駄《げた》や、....
「五右衛門と新左」より 著者:国枝史郎
くし野を馬曳きて吠える犬 天が下はるばるかかる鯨売 蚊遣立って静かに伝ふ闇夜かな
蚊柱の物狂ふなり伏見城 京伏見経机ありあはれなり 辻斬の細きもとでや念仏僧 鬼瓦....
「おせん」より 著者:邦枝完二
んな」 「父、おいらにも銭くんな」 「あたいもだ」 「あたしもだ」 軒端に立つ
蚊柱のように、どこからともなく集まって来た子供の群は、土平の前後左右をおッ取り巻....
「上海」より 著者:横光利一
の前に重なり合って饂飩を食べた。忽ち、細な綿の粉は動揺する小女たちの一群の上で、
蚊柱のように舞い上った。肺尖カタルの咳が、湯気を立てた饂飩の鉢にかんかんと響いて....