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蝉時雨
「蝉時雨〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
蝉時雨の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「鯉魚」より 著者:岡本かの子
たあと、二人は川へ向いた苫を少し掻き分けて、対岸の景色を眺《なが》めていました。
蝉時雨《せみしぐれ》は、一しきり盛《さか》りになって山の翠《みどり》も揺《ゆ》る....
「街頭から見た新東京の裏面」より 著者:杉山萠円
い一年前までは、この辺は墓原や成金壁なぞで埋められていて、夏なぞはせんだんの樹の
蝉時雨《せみしぐれ》の風情があるという、かなり淋しいところであった。それが魚市場....
「二十四年前」より 著者:寺田寅彦
教則本をさらっている。それにつけて時おりはあの当時を思い出す。そうすると、きっと
蝉時雨の降る植物園の森の裏手の古びたペンキ塗りの洋館がほんとうに夢のように記憶に浮かんで来る。 (大正十二年八月、思想)....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
を薄く交えて、藍緑の流に群青の瀬のあるごとき、たらたら上りの径がある。滝かと思う
蝉時雨。光る雨、輝く木の葉、この炎天の下蔭は、あたかも稲妻に籠る穴に似て、もの凄....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
次ぎのような次第でございました……。 それはたしかに、ある年の夏の初、館の森に
蝉時雨が早瀬を走る水のように、喧しく聞えている、暑い真昼過ぎのことであったと申し....
「浅間山麓より」より 著者:寺田寅彦
落着いてから子供等と裏の山をあるいていると、鶯が鳴き郭公が呼ぶ。落葉松の林中には
蝉時雨が降り、道端には草藤、ほたるぶくろ、ぎぼし、がんぴなどが咲き乱れ、草苺やぐ....
「南島譚」より 著者:中島敦
の上に炸裂したのである。 椰子の葉を叩くスコールの如く、麺麭《パン》の樹に鳴く
蝉時雨《せみしぐれ》の如く、環礁の外に荒れ狂う怒濤の如く、ありとあらゆる罵詈雑言....
「大正女流俳句の近代的特色」より 著者:杉田久女
月見にもかげほしがるや女づれ 千代女 木々の闇に月の飛石二つ三つ 汀女
蝉時雨日斑あびて掃き移る 久女 三井寺の源氏の間の灯を蝙蝠があおつ情趣。月....
「十二神貝十郎手柄話」より 著者:国枝史郎
らしい。 「饒舌にしてわずらわし」――彼についてこう云われている。 「油坊主」「
蝉時雨」――などというような綽名さえ、彼にはあったということであるが、しかし彼の....
「雪の宿り」より 著者:神西清
移りになりまして二度目の青葉が濃くなって参ります。明けても暮れても谷の中は喧しい
蝉時雨ばかり。その頃になりますと、この半年ほど櫓を築いたり塹を掘ったりして睨み合....
「蝉の美と造型」より 著者:高村光太郎
の無邪気な力一ぱいの声が頭のしんまで貫くように響いてくるのを大変快く聞く。まして
蝉時雨というような言葉で表現されている林間のセミの競演の如きは夢のように美しい夏....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
向けになった胸が、臍まで寛ける。 清水はひとり、松の翠に、水晶の鎧を揺据える。
蝉時雨が、ただ一つになって聞えて、清水の上に、ジーンと響く。 渠は心ゆくばかり....
「鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
後はまたもとに返ってソヨともしない森の静けさ――住吉村の奥らしく、ジーッと気懶い
蝉時雨。 「源内どの! 源内殿!」 彼方で呼ぶ声に腰を上げて、平賀源内、唐人|....
「性に眼覚める頃」より 著者:室生犀星
たが、こんどは境内を見渡した。夏のことで暑いさかりの参詣人も途絶えて、湧くような
蝉時雨が起っているばかりであった。彼女は一本の釘をとり出した。そして母親のする通....