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行く春
「行く春〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
行く春の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「婦系図」より 著者:泉鏡花
、一所にまたお汁粉をね。」 酒井は黙って頷いた。 「早瀬さん、御緩り。」 と
行く春や、主税はそれさえ心細そうに見送って、先生の目から面を背ける。 酒井は、....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
た。歩兵屯所の八重桜も定めてさんざんに吹き散らされるであろうと、半七は想像した。
行く春のならいで、花の散るのは、是非もないが、この大風で火事でも起こってくれなけ....
「愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
のさばり出た桃の枝は敗残の姿痛ましげに、今日も夕闇の空に輪郭をぼかしている。私は
行く春の面影を傷手を負うたような心地で、偲ばぬわけにはゆかぬのである。私は惜しく....
「深夜の電話」より 著者:小酒井不木
い。幸いに一味のものの中には女もいるから、それを替え玉にしようとして、糸子のよく
行く春日町の美容院へ研究に行かせたのだ。そのとき山本はその女の案内をしたのだが、....
「三筋町界隈」より 著者:斎藤茂吉
逸していなかったためである。私はその時のことを「かなしかる初代ぽん太も古妻の舞ふ
行く春のよるのともしび」という一首に咏んだ。私のごとき山水歌人には手馴れぬ材料で....
「獄中生活」より 著者:堺利彦
隣室の鼾に和して蛙鳴く 紫の桐花の下や朱衣の人 桐の花囚人看守曽て見ず
行く春を牢の窓より惜しみけり 永き日を「御看守様」の立尽す 正坐しても安....
「縮図」より 著者:徳田秋声
の見晴らしがよくなり、雨のふる春の日などは緑の髪に似た柳が煙り、残りの浅黄桜が、
行く春の哀愁を唆るのであった。この家も土地建ち初まりからのもので、坪数にしたら十....
「小さな旅」より 著者:富田木歩
が流れている。 五勺ほどの酒でいゝ気持になった。 墓地越しに町の灯見ゆる遠蛙
行く春の蚊にほろ醉ひのさめにけり こうした句作境涯に心ゆくばかり浸り得さして....
「草枕」より 著者:夏目漱石
《かいだう》の精が出てくる月夜かな うた折々月下の春ををちこちす 思ひ切つて更け
行く春の独りかな などと、試みているうち、いつしか、うとうと眠くなる。 恍惚....
「虞美人草」より 著者:夏目漱石
謎《なぞ》の女は立て切った一間《ひとま》のうちで、鳴る鉄瓶《てつびん》を相手に、
行く春の行き尽さぬ間《ま》を、根限《こんかぎ》り考えている。 欽吾はわが腹を痛....
「吾輩は猫である」より 著者:夏目漱石
」と云いかけると
「なんだって? ヴァイオリンを抱いて寝たって? それは風流だ。
行く春や重たき琵琶《びわ》のだき心と云う句もあるが、それは遠きその上《かみ》の事....
「郷愁の詩人 与謝蕪村」より 著者:萩原朔太郎
えば春の句で 遅き日のつもりて遠き昔かな 春雨や小磯《こいそ》の小貝ぬるるほど
行く春や逡巡《しゅんじゅん》として遅桜《おそざくら》 歩行歩行《ありきありき》も....
「東山時代における一縉紳の生活」より 著者:原勝郎
ったというので、その晩宗祇と肖柏とが、実隆の邸に来り、歌道の清談に耽りつつ、暮れ
行く春を惜んだとのことである。この写本が出来てからして、『源氏』の講釈はまた開講....
「俳人蕪村」より 著者:正岡子規
》 のごとく自己以外にありて半ば人事美を加えたるすらきわめて少し。 蕪村の句は
行く春や選者を恨む歌の主 命婦《みゃうぶ》より牡丹餅《ぼたもち》たばす彼岸かな ....
「千世子(三)」より 著者:宮本百合子
(一) 千世子は大変疲れて居た。 水の様な色に暮れて
行く春の黄昏の柔い空気の中にしっとりとひたって薄黄な蛾がハタハタと躰の囲りを円く....