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袂
「袂〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
袂の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
、余程《よっぽど》先を急いでいたんだろう。
「その内に弥勒寺橋《みろくじばし》の
袂《たもと》へ来ると、お蓮はやっと足を止めて、茫然とあたりを見廻したそうだ。あす....
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
。」
多少心もちの明《あかる》くなった洋一は、顔は叔母の方へ近づけたまま、手は
袂《たもと》の底にある巻煙草の箱を探っていた。
「そら、そこに東枕にてもよろしい....
「路上」より 著者:芥川竜之介
とか答える前に、苦笑《くしょう》しずにはいられなかった。が、大井は黒木綿の紋附の
袂《たもと》から、『城』同人の印《マアク》のある、洒落《しゃ》れた切符を二枚出す....
「死後」より 著者:芥川竜之介
め》だ、いくら弁解《べんかい》しても。」
妻は僕の怒鳴《どな》るよりも前にもう
袂《たもと》に顔を隠し、ぶるぶる肩を震《ふる》わせていた。
「何と言う莫迦《ばか....
「蜃気楼」より 著者:芥川竜之介
った。
「あたしは今夜は子供になって木履をはいて歩いているんです。」
「奥さんの
袂《たもと》の中で鳴っているんだから、――ああ、Yちゃんのおもちゃだよ。鈴のつい....
「出帆」より 著者:芥川竜之介
をふっている。その前には、背の高い松岡《まつおか》と背の低い菊池《きくち》とが、
袂《たもと》を風に翻しながら、並んで立っている。そうして、これも帽子をふっている....
「たね子の憂鬱」より 著者:芥川竜之介
る、大きい一匹の鼠さえ感じた。感じた?――それは実際「感じた」だった。彼女は夫の
袂《たもと》を引き、「あら、あなた、鼠が」と言った。が、夫はふり返ると、ちょっと....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
新蔵のほろ酔《よい》の腹の底には、どこか真剣な所があったのでしょう。一つ目の橋の
袂を左へ切れて、人通りの少い竪川《たてかわ》河岸を二つ目の方へ一町ばかり行くと、....
「或る女」より 著者:有島武郎
に鼻血がどくどく口から顎《あご》を伝って胸の合わせ目をよごした。驚いてハンケチを
袂《たもと》から探り出そうとした時、
「どうかなさいましたか」
という声に驚か....
「或る女」より 著者:有島武郎
なわたしだかわたしではないか……(そこで葉子は倉地から離れてきちんとすわり直して
袂《たもと》で顔をおおうてしまった)泥棒《どろぼう》をしろとおっしゃるほうがまだ....
「星座」より 著者:有島武郎
に行って落葉をかきのけた。一夜の間に落ちる木の葉の数はそれほどおびただしかった。
袂《たもと》の中から紙屑をつぎつぎに取りだしてそれをそこの穴に捨てた。夕方のかす....
「美術曲芸しん粉細工」より 著者:阿部徳蔵
て行つた。 五月の、よく晴れたある日であつた。 横浜は野毛通りの、とある橋の
袂へ車をおいて、狐光老はしん粉で花を造つてゐた。 麗かな春の光が、もの優しくし....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
後、私達はまるで生れ変ったような、世にもうれしい、朗かな気分になって、右と左とに
袂を別ったことでございました。 ついでながら、私と私の生前の良人との関係は今も....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
歩かんと十時ごろより立ち出で、観音へ参詣して吾妻橋の上へ来り。四方を眺むれば橋の
袂に焼くもろこしの匂い、煎豆の音、氷屋の呼声かえッて熱さを加え、立売の西瓜日を視....
「本所両国」より 著者:芥川竜之介
に杭の間には坊主頭の土左衛門が一人うつむけに浪にゆすられていた。…… 両国橋の
袂にある表忠碑も昔に変らなかった。表忠碑を書いたのは日露役の陸軍総司令官大山巌公....