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「詮方〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

詮方の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
二度ほど岡の事を思っていた。あんなに自分を慕っていはしたが岡も上陸してしまえば、詮方《せんかた》なくボストンのほうに旅立つ用意をするだろう。そしてやがて自分の事....
疑問の金塊」より 著者:海野十三
金を愛児の上に掛けさせるか、それとも首をくくって死ぬより仕方がなかったのだった。詮方なく、物は相談と思い、カンカン寅の許を訪ね、あのボロボロの建物を心ばかりの抵....
世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
してその部屋へいかれると思うのだ。部屋の鍵はおれが持っているのだぞ」 彼ももう詮方が尽きたらしく、「では、あなた。ご案内をいたしましょう」 「階子のある所を教....
琵琶伝」より 著者:泉鏡花
郎はどうした。」 「息災で居ります。」 「よく、汝、別れることが出来たな。」 「詮方がないからです。」 「なぜ、詮方がない。うむ。」 お通はこれが答をせで、懐....
湯女の魂」より 著者:泉鏡花
妾に跟いてこっちへと、宣示すがごとく大様に申して、粛然と立って導きますから、詮方なしに跟いて行く。土間が冷く踵に障ったと申しますると、早や小宮山の顔色|蒼然....
照葉狂言」より 著者:泉鏡花
拶にも上りませぬのに、失礼な、つい、あの、まあ、どうしたら可うございましょう。」詮方なげに微笑みたまいつ。果は笑いとこそなりたれ、わがその時の泣声の殺されやする....
黒百合」より 著者:泉鏡花
、今瞳を据えた、パナマの夏帽の陰なる一双の眼は、極めて冷静なものである。小間使は詮方なげに、向直って、 「お嬢様、お茶を入れて参りましょう。」 勇美子は余念な....
沼夫人」より 著者:泉鏡花
いたでしょうね。) と来たのにゃ、赫としたよ、但しそういう方も晩飯前です。……詮方がない、大声を揚げて見ようかとも言い出したが、こりゃ直ぐに差留められた。勿論....
南極の怪事」より 著者:押川春浪
上暗くなり、わが船上に一点の燈火輝くのみ、四方の物まったく見えずなりしかば、余は詮方なく、船中に唯一個ある昇降口を下って、船底の寝室に入り、このような時には早く....
良夜」より 著者:饗庭篁村
く疑わしく、もし投身の覚悟にやと告ぐる者ありしゆえ職務上かく問うなり」と言うに、詮方なく宿所姓名を告げ、「活版所は暑くして眠られぬまま立出し」とあらましを話せば....
八犬伝談余」より 著者:内田魯庵
だ筆硯に不自由するばかりでなく、書画を見ても見えず、僅かに昼夜を弁ずるのみなれば詮方なくて机を退け筆を投げ捨てて嘆息の余りに「ながらふるかひこそなけれ見えずなり....
瓜の涙」より 著者:泉鏡花
知れているのに、跫音にも、けたたましく驚かさるるのは、草の鶉よりもなお果敢ない。詮方なさに信心をはじめた。世に人にたすけのない時、源氏も平家も、取縋るのは神仏で....
白峰の麓」より 著者:大下藤次郎
を散らし紫を溶かす、傘をかざしてやや暫くは辛抱したが、いつ歇むとも思えぬ空合に、詮方なく宿に帰った。 この夜、大雨の中を、宿のおかみさんは青柳から帰って来た。....
贋物」より 著者:葛西善蔵
った。で耕吉はつい東京で空想していた最後の計画というのを話した。 「私はその時は詮方がありませんから、妻を伴れて諸国巡礼に出ようと思ってたんです。私のようなもの....
活人形」より 著者:泉鏡花
りし時、下枝が記念に見たまえとて、我に与えし写真あり。我はかの悪僕に追立てられて詮方無く、その夜赤城の家を出で、指して行方もあらざればその日その日の風次第、寄る....