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「諧調〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

諧調の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
」より 著者:島木健作
らの物音を、太田は飽くことなく楽しんだ。雑然たるそれらの物音もここではある一つの諧調《かいちょう》をなして流れて来るのである。人間同士、話をするということが、堅....
新生」より 著者:島崎藤村
かった。あらゆる石の重みと、線と、組立とが高い天井の下に集められて、一つの大きな諧調を成していた。日は長い儀式の中で次第に暮れて行った。窓々に映る夕日も消えて行....
浮世絵の曲線」より 著者:寺田寅彦
のではないかと私には思われる。 黒白の切片の配置、線の並列交錯に現われる節奏や諧調にどれだけの美的要素を含んでいるかという事になると、問題がよほど抽象的なもの....
映画雑感(Ⅰ)」より 著者:寺田寅彦
愉快なものである。刑務所や工場を題材にしているにかかわらず、全体に明るい朗らかな諧調が一貫している。このおもしろさはもちろん物語の筋から来るのでもなく、哲学やイ....
巴里祭」より 著者:岡本かの子
の手足の神経の末梢まで、浸み透り、心の底にふるえている男としての恥かしさと、妙な諧調を混え、新吉はやがて恍惚とした無抵抗状態になるのだった。花弁のように軽くて、....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
、極光のように開口いっぱいに噴出し、はじめは淡紅、やがて青紫色に終るこの世ならぬ諧調が、キラキラ氷河をわたる大絶景を呈するのだ。しかし、このパミールに絶対に火山....
万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
全身的であった。そして、「滝つ河内」という現実をも免していないものである。一首の諧調音を分析すれば不思議にも加行の開口音があったりして、種々勉強になる歌である。....
巴里の唄うたい」より 著者:岡本かの子
へ――巴里の感情は最近これらのはやり唄の推移によってスイートソロから陽気な揶揄の諧調へ弾み上ったことが証拠立てられた。このとき他の国の財政の慌てふためきをよそに....
新しき世界の為めの新しき芸術」より 著者:大杉栄
との中にのみ、今日生の至上の美を見る。征服の事実が其の絶頂に達した今日に於ては、諧調はもはや美ではない。美はただ乱調にある。諧調は偽りである。真はただ乱調にある....
なよたけ」より 著者:加藤道夫
時折|淋しげに鳴く山鴿の鳴声が、微妙に入り交り、織りなされ、不可思議な「夢幻」の諧調となって、舞台はしばらくは奇妙に美しい一幅の「絵図」になってくれればいい。文....
蝉の美と造型」より 著者:高村光太郎
幸福と平和の象徴として好んでセミの小彫刻を作って装身具などの装飾にした。声とその諧調の美とを賞したのだという。日本のセミは一般に喧しいもののように取られ、アブラ....
チチアンの死」より 著者:木下杢太郎
、黄いろい月、そのふくよかな光のうちに膨らむ。月が動き、凡ての泉が輝き、荘厳の大諧調|立所に目をさます。その時雲が急に行き過ぎて、柔い素足の残す跫音かと思われた....
ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
で地水火風に打ち勝つのです。 その胸から迫り出て、全世界をその胸に 畳み込ませる諧調でないでしょうか。 自然は無際限なる長さの糸に、 意味もなく縒を掛けて紡錘に....
偶言」より 著者:津田左右吉
どうか。多分は目茶苦茶なものになりそうである。本来目に見る色は共存的関係において諧調が成り立つものであって、音声のように連続的な旋律をなすべきものでないからであ....
黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
い。雪渓の勾配はさして急ではなかった。両側の山で駒鳥が盛に鳴く、沈静な谷の空気が諧調の音波を無限に拡げる。それには耳も借さない風情で雪に慣れた南日君は、得意の鼻....