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質素
「質素〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
質素の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「河童」より 著者:芥川竜之介
もしれない。」
僕は部屋《へや》の中を見まわしました。そこには僕の気のせいか、
質素な椅子《いす》やテエブルの間に何か清らかな幸福が漂っているように見えるのです....
「魔術」より 著者:芥川竜之介
暗い石油ランプの光に照された、陰気な部屋の中を見廻しました。
ミスラ君の部屋は
質素な西洋間で、まん中にテエブルが一つ、壁側《かべぎわ》に手ごろな書棚が一つ、そ....
「或る女」より 著者:有島武郎
柳《かりゅう》の人たちさえうらやましがらせた。そしていろいろな風聞が、清教徒風に
質素な早月の佗住居《わびずまい》の周囲を霞《かすみ》のように取り巻き始めた。
....
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
たる、威儀ある紳士とその老母とは、顔を見合わせて迭《たが》いに色を動かせり。渠は
質素なる黒の紋着きの羽織に、節仙台《ふしせんだい》の袴《はかま》を穿《は》きて、....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
品の佳い、しっとりした縞お召に、黒繻子の丸帯した御新造風の円髷は、見違えるように
質素だけれども、みどりの黒髪たぐいなき、柳橋の小芳であった。 立身で、框から外....
「売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
と、手腕を世に知らるる、最近留学して帰朝した秦宗吉氏である。 辺幅を修めない、
質素な人の、住居が芝の高輪にあるので、毎日病院へ通うのに、この院線を使って、お茶....
「みさごの鮨」より 著者:泉鏡花
面長で、柔和かなちっとも気取っけのない四十ぐらいな――後で聞くと主人だそうで――
質素な男が出迎えて、揉手をしながら、御逗留か、それともちょっと御入浴で、と訊いた....
「出奔」より 著者:伊藤野枝
てきたら一緒にそこらを歩いて見ましょうね」 いつの間にか志保子――友達――は、
質素な木綿の筒袖に袴をはきながら晴れやかな微笑を浮かべて、物思っている登志子の横....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
、小鳥を一羽ずつ色絵に染めた誂えで、着衣も同じ紋である。が、地は上下とも黒紬で、
質素と堅実を兼ねた好みに見えた。 しかし、袴は、精巧|平か、博多か、りゅうとし....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
ざいました。 こんな苦しい道中のことでございますから、御服装などもそれはそれは
質素なもので、足には藁沓、身には筒袖、さして男子の旅装束と相違していないのでした....
「幸福な家庭」より 著者:井上紅梅
もある訳だな。――上下二冊揃だ。寝室がまた一間あって、真鍮のベッドかな。それとも
質素を旨として第一監獄工場で作った楡の木のベッドでもいいが。ベッドの下は非常に清....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
る時でも従五位勲何等の局長閣下でなくて一個の処士|自恃庵主人であった。浜田は簡樸
質素の学究、古川は卓落|不覊の逸民、陸は狷介気を吐く野客であった。而して玄関番は....
「西航日録」より 著者:井上円了
遺物を拝観す。その中には、先生在世中所携の帽子、杖、手袋、懐中鏡等あり。いずれも
質素のものにて、田舎の老爺の携帯せるもののごとく見ゆ。大学内には八十歳前後の半身....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
内にて夏公園、冬公園を一覧す。この地はブエノスアイレス市と異なりて、衣食住ともに
質素を守り、華奢に走らず。したがって、生活費も労働賃銀も安しという。日本の労働者....
「寺町」より 著者:岩本素白
もこうした朝早くの葬式は、やはり見送る人々の仕事の都合や何かを顧慮した、便宜的な
質素な葬式なのであろう。然しお祭騒ぎをされずに、瑞々しい若葉の朝を、きわめて小人....