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「踏み出す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

踏み出すの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
妖婆」より 著者:芥川竜之介
乾きのペンキの※《におい》を漂わしている後から、アスファルトの往来へひょいと一足踏み出すと、新蔵のかぶっている麦藁帽子の庇《ひさし》をかすめて、蝶が二羽飛び過ぎ....
或る女」より 著者:有島武郎
りげに見える古藤さえが、葉子が今立っている崕《がけ》のきわから先には、葉子が足を踏み出すのを憎み恐れる様子を明らかに見せているのだ。結婚というものが一人《ひとり....
或る女」より 著者:有島武郎
能としている葉子は、こんな有頂天《うちょうてん》な境界《きょうがい》から一歩でも踏み出す事を極端に憎んだ。葉子が帰ってから一度しか会う事のできない妹たちが、休日....
海の使者」より 著者:泉鏡花
その蘆の根を、折れた葉が網に組み合せた、裏づたいの畦路へ入ろうと思って、やがて踏み出す、とまたきりりりりと鳴いた。 「なんだろう」 虫ではない、確かに鳥らし....
転機」より 著者:伊藤野枝
、幾百倍ともしれない世間に漲った不当な力に圧迫され、防ぎ止められて、一歩も半歩も踏み出すことはおろか、どうかすれば反対に、底の底まで突き落されはね飛ばされなけれ....
橋の上」より 著者:犬田卯
巻く流れも、大空も何も見なかった。眼をつむるようにして、足許だけ――ほんの自分が踏み出す四五センチ先ばかりしか見なかった。 ふらふらと定めない彼の足は、五歩、....
耽溺」より 著者:岩野泡鳴
物を手に取り、吉弥をにらんで帰って行った。 「泥棒じじい!」 吉弥は片足を一歩踏み出すと同時に、あごをもよほど憎らしそうに突き出して、くやしがった。その様子が....
鞄らしくない鞄」より 著者:海野十三
二人で守って男のアパートへ入り、同棲《どうせい》生活の第一夜を絢爛《けんらん》と踏み出すことに両人の意見は完全なる一致をみたのであるが、この詳細もここにくだくだ....
千年後の世界」より 著者:海野十三
りほかなかった。 火星との戦争 いよいよフルハタは、棺桶から外に足を踏み出すときがきた。大地を歩くなんて、一千年以来のことだと思うと、じつに感慨無量....
東海道五十三次」より 著者:岡本かの子
車で品川へ戻り、そこから道中|双六《すごろく》のように一足一足、上りに向って足を踏み出すのである。何の為めに? 目的を持つ為めに。これを近頃の言葉では何というの....
豆腐買い」より 著者:岡本かの子
打って行く。男の子はそのあとの線路をハイハードルのコツで大きく高く跳ね越えて丁度踏み出す加奈子の靴尖に踏み立つ。 少年と青年の間の年頃の男の子は、すこしむっと....
巴里祭」より 著者:岡本かの子
ウムの花と向いあって籠の駒鳥が爽やかに水を浴びていた。 割栗石の鋪石へ一歩靴を踏み出す。すると表の壁の丁度金鎖草の枝垂れた新芽が肩に当るほどの所で門番のかみさ....
母子叙情」より 著者:岡本かの子
に描いた範囲内の郊外だけだった。武蔵野といってもごく狭い部分だった。それから先へ踏み出すときは、 「僕には親しみが持てない土地です。引返しましょう」とぐんぐんか....
鯉魚」より 著者:岡本かの子
ものの、行先の覚束《おぼつか》なさ、途中《とちゅう》の難儀《なんぎ》、もう一足も踏み出す勇気はございません。いっそこの川へ身を投げて死にとうございます」 また....
小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
てかれは再び燈火の前に向かった。そのうしろ姿を睨みつけながら、市松は一と足も前に踏み出すことが出来なかった。それでも彼は罵るように又訊いた。 「して、おのれは何....