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「踏石〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

踏石の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或敵打の話」より 著者:芥川竜之介
その内に彼等の旅籠《はたご》の庭には、もう百日紅《ひゃくじつこう》の花が散って、踏石《ふみいし》に落ちる日の光も次第に弱くなり始めた。二人は苦しい焦燥の中に、三....
渦巻ける烏の群」より 著者:黒島伝治
びよった。 「今晩は、――ガーリヤ!」 ――彼が窓に届くように持って来ておいた踏石がとりのけられている。 「ガーリヤ。」 砕かれた雪の破片が、彼の方へとんで....
蠅男」より 著者:海野十三
か」 奥から飛んで出てきた仲働きのお手伝いさんが、慌てて宿屋の焼印のある下駄を踏石の上に揃えた。 「ああ、この辺はいつもこんな臭いがするところなのかネ」 「い....
雛妓」より 著者:岡本かの子
老婢が出て来て桟の多い硝子戸を開けた。わたくしはそれとすれ違いさま、いつもならば踏石の上にのって、催促がましく吾妻下駄をかんかんと踏み鳴らし、二階に向って「帰っ....
艸木虫魚」より 著者:薄田泣菫
かの金を主人の手に渡させた。 貞昌は静かに立って夜の障子を開けた。薄暗い内庭に踏石がほんのり白く浮んで見えた。彼は手に持った溺器を強くそれに叩きつけた。居合せ....
」より 著者:宮本百合子
る。 図らぬ時に、私の田園への郷愁が募った。いつか、檜葉の梢の鳥は去って、庭の踏石の傍に、一羽の雀が降りて居る。先刻、私が屋根に認めた一群のものらしい。チョン....
嬰寧」より 著者:田中貢太郎
類の家をかたっぱしから探して、佳い花の種を買って植えたが、数月の中に、家の入口、踏石、垣根、便所にかけて花でない所はなくなった。庭の後に木香の木の棚があった。そ....
華々しき瞬間」より 著者:久坂葉子
歴史もわからない。 大阪近郊、南田辺のとある露地の奥、石の門柱と木の扉。そして踏石が三つ。格子戸の玄関。急な段梯子。きいろくなった襖。庭に面した六畳。壁にぶら....
旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
鶯《やぶうぐいす》が鳴いている。カラカラと、辷《すべ》りのいい門の戸をあけると、踏石《ふみいし》だけ残して、いろとりどりな松葉|牡丹《ぼたん》が一面。軒下に下っ....
舞踏病」より 著者:豊島与志雄
、呼ばれるまでもなく走って行きました。見ると、彼女は高い縁側から、風呂場に通ずる踏石のその角のところへ、前のめりに落っこっています。口が血で一杯です。その口一杯....
男女の交際について」より 著者:坂口安吾
得ず、すべては自己の責任に於て行われているから、失敗も、そこから立ち直り伸び上る踏石となり、次の歩みのフミキリとなる。 神ならぬ身には、間違いはある。いくら聡....
番町皿屋敷」より 著者:岡本綺堂
眼に立つような塵のないのを見とどけて、彼女は更に縁側に出て、三足ばかりの庭下駄を踏石の上に行儀よく直した。 「これで手落ちはない。置燈籠の灯は暮れてから入れまし....
顎十郎捕物帳」より 著者:久生十蘭
ばらくそこで躊躇《ためら》うようすだったが、やがて五分きざみに格子戸をひきあけて踏石へにじりあがり、手さぐりでそろそろと部屋へ入って来て行灯に火をつけた。 障....
顎十郎捕物帳」より 著者:久生十蘭
ン庭のほうへおりて行く。 顎十郎は、ひょろ松のうしろについて、ノソノソと玄関の踏石へおりながら、切妻板《きりづまいた》のむこうの壁の凹所《へこみ》のほうを眺め....
仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
のを撥ね上げて進みます。円い扁たいものが撥ね除けられた跡には、見るも潤って美しい踏石の面が現れ出ました。秀吉は呆れて瞠った眼で、撥ね除けられた円い扁たいものを見....