透かす[語句情報] »
透かす
「透かす〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
透かすの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「邪宗門」より 著者:芥川竜之介
ざいましょう。それまでじっとしていらっしったのが、扇を斜《ななめ》に相手の方を、
透かすようにして御窺いなさいますと、その時その盗人の中に嗄《しわが》れた声がして....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
ね」と、庄太は丁寧に紙をひろげて、その上にうず巻いているような五、六本の黒い毛を
透かすように眺めていた。 「まだそればかりじゃあねえ。垣根の近所には四足のあとが....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
軒に艶ある、その横町の中程へ行くと、一条朧な露路がある。 芸妓家二軒の廂合で、
透かすと、奥に薄墨で描いたような、竹垣が見えて、涼しい若葉の梅が一木、月はなけれ....
「朱日記」より 著者:泉鏡花
十二ヶ所、一時に起る摺半鉦、早鐘。 早や廊下にも烟が入って、暗い中から火の空を
透かすと、学校の蒼い門が、真紫に物凄い。 この日の大火は、物見の松と差向う、市....
「海異記」より 著者:泉鏡花
。」 女房は顔を上げて、 「小児だねえ」 と独りでいったが、檐の下なる戸外を
透かすと、薄黒いのが立っている。 「何だねえ、人をだましてさ、まだ、そこに居るの....
「吉原新話」より 著者:泉鏡花
て……病人でもありそうな様子だったもんだから。」 と言って、その明を俯向いて見
透かす、民弥の顔にまた陰気な影が映した。 「でもね、当りましたわ、先生、やっぱり....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
は例の西郷桐野篠原の画像が掲げられてあった。 男湯と女湯とのあいだは硝子戸で見
透かすことが出来た。これを禁止されたのはやはり十八、九年の頃であろう。今も昔も変....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
ければならなかったのだ。何故なら、元来アレキサンドライトという宝石は、電燈の光で
透かすと、それが真紅に見えるからだ。そこで僕は、伸子がレヴェズにあの室を指定して....
「春昼」より 著者:泉鏡花
て、馬車、車がらがらと五、六台、それを見に出たものらしい、郵便局の軒下から往来を
透かすようにした、目が、ばったり客人と出逢ったでありましょう。 心ありそうに、....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
であったのである、足もまだ粘々する、手はこの通り血だらけじゃ、と戦いたが、行燈に
透かすと夜露に曝れて白けていた。 「我折れ何とも、六十の親仁が天窓を下げる。宰八....
「茸の舞姫」より 著者:泉鏡花
びた声の大音で、 「何を売るや。」 「美しい衣服だがのう。」 「何?」 暗を見
透かすようにすると、ものの静かさ、松の香が芬とする。 六 鼠色の....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
「ちょいと。」 「そんなら行け。だが島野、」と言いながら紳士の顔を、皮の下まで見
透かすごとくじろりと見遣って、多磨太はにやり。 擽られるのを耐えるごとく、極め....
「怨霊借用」より 著者:泉鏡花
が、ふとこれに心を取られて、松の方へ小戻りして、向合った崖縁に立って、谿河を深く
透かすと、――ここは、いまの新石橋が架らない以前に、対岸から山伝いの近道するのに....
「画道と女性」より 著者:上村松園
うと、私は連日朝から高台寺に通い出したのでした。 薄鴇色の下着の模様をほのかに
透かす、黒地の薄物を着た女、まあいわば先年帝展に描いた後ろ向き立姿の婦人が、やや....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
しい高さ、その紅い線の通った六角形の太茎、裏白の、しかも緑の表面の、八月の日光を
透かす夕立のような反射。 なんと爽快な嵐、 なんとまた大きな蝸牛だ。あ、その....