»
透る
「透る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
透るの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
がら、「それがみんな裏を掻かれて、――もう何も彼も駄目でございますわ。」と、細く
透る声で答えました。それからお敏が、この雷雨の蓆屋根の下で、残念そうに息をはずま....
「星座」より 著者:有島武郎
けて鐘の音が五つ冴え冴えと園の耳もとに伝わってきた。
それは胸の底に沁《し》み
透るような響きを持っていた。鐘の音を聞くと、その時まで考えていたことが、その時ま....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
、稲の太るが嬉しゅうてなりませぬ、はい、はい。」 と細いが聞くものの耳に響く、
透る声で言いながら、どこをどうしたら笑えよう、辛き浮世の汐風に、冷く大理石になっ....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
のと一緒であった。 がたがたと身震いしたが、面は幸に紅潮して、 「ああ、腸へ沁
透る!」 「何かその、何事か存じませぬが、按摩は大丈夫でござります。」と、これも....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
さい。」 とようよう云う、控え目だったけれども、朗に清しい、框の障子越にずッと
透る。 中からよく似た、やや落着いた静な声で、 「はあ、誰方?」 お妙は自分....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
――痩せた胸を三度打った。 「願いまっしゅ。……お晩でしゅ。」 と、きゃきゃと
透る、しかし、あわれな声して、地に頭を摺りつけた。 「願いまっしゅ、お願い。お願....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
と目を※った。…… 二十二 「どうするの、それから。」 細い、が
透る、力ある音調である。美しい女のその声に、この折から、背後のみ見返られて、雲の....
「茸の舞姫」より 著者:泉鏡花
四つ時十時過ぎと思う頃、凄じい電光の中を、蜩が鳴くような、うらさみしい、冴えた、
透る、女の声で、キイキイと笑うのが、あたかも樹の上、雲の中を伝うように大空に高く....
「雪霊続記」より 著者:泉鏡花
また青い火の影に、紫陽花の花に包まれますようで、且つ白羽二重の裏に薄萌黄がすッと
透るようでした。 ウオオオオ! 俄然として耳を噛んだのは、凄く可恐い、且つ力....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
と娘が引取った、我が身の姿と、この場の光景、踊のさらいに台辞を云うよう、細く
透る、が声震えて、 「お爺さんが留守の時も、あの、戸を閉めた中に居て、ような、い....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
で、そこらに鯰でも湧出しそうな、泥水の中へ引摺込まれそうな気がしたんで、骨まで浸
透るほど慄然々々するんだ。」 と肩を細うして、背で呼吸をする。 「男らしくもな....
「露肆」より 著者:泉鏡花
向いて、今時は珍らしい、朱鷺色の角隠に花笄、櫛ばかりでも頭は重そう。ちらりと紅の
透る、白襟を襲ねた端に、一筋キラキラと時計の黄金鎖が輝いた。 上が身を堅く花嫁....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
、袖の縞の二条ばかりが傘を持った手に触れたのだったが、その手が悚然とするまで冷え
透る。…… 持ちかえて、そのまま傘を畳んで歩行き出すと、ものの一二町の間という....
「妖術」より 著者:泉鏡花
りと、銀の無地の扇子を開いて、かざした袖の手のしないに、ひらひらと池を招く、と澄
透る水に映って、ちらちらと揺めいたが、波を浮いたか、霞を落ちたか、その大さ、やが....
「卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
に腰を掛けた、が、その上に蔽い掛った紅楓の大木の美しさ。色は面を染めて、影が袖に
透る……霽れるどころか、次第に冷い雨脚から、三人を包んで、雫も落さない。そこで小....