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「遅桜〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

遅桜の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
船医の立場」より 著者:菊池寛
一 晩春の伊豆半島は、所々《しょしょ》に遅桜《おそざくら》が咲き残り、山懐《やまぶところ》の段々畑に、菜の花が黄色く、夏....
半島一奇抄」より 著者:泉鏡花
砂を挙げて南条に引返し、狩野川を横切った。古奈、長岡――長岡を出た山路には、遅桜の牡丹咲が薄紫に咲いていた。長瀬を通って、三津の浜へ出たのである。 富士が....
探偵夜話」より 著者:岡本綺堂
火薬庫 例の青蛙堂主人から再度の案内状が来た。それは四月の末で、わたしの庭の遅桜も散りはじめた頃である。定刻の午後六時までに小石川の青蛙堂へ着到すると、今夜....
桜花を詠める句」より 著者:杉田久女
そのものの美しさなり実相を写生しているところに、差違がある。 木樵より他に人なし遅桜 多代女 みささぎや松の木の間の遅桜 砧女 多代女の句にはまだ一幅の絵....
火薬庫」より 著者:岡本綺堂
例の青蛙堂主人から再度の案内状が来た。それは四月の末で、わたしの庭の遅桜も散りはじめた頃である。定刻の午後六時までに小石川の青蛙堂へ着到すると、今夜....
狂歌師赤猪口兵衛」より 著者:夢野久作
屋の騒動の噂が隈もなく行き渡ってしまった三日目……三月十三日の正午下り。春も闌の遅桜、早桃が見渡す限りの筑紫野の村々に咲き乱れて、吾れ勝ちに揚る揚雲雀も長閑な博....
山の湯の旅」より 著者:上村松園
ことにその木の間からは、六月だというのに、遠い山の雪の白さなどがちらと窺くやら、遅桜がほろほろ見える気持ちなどは、恐らく微妙な一幅の絵画で、私もその画の中の一つ....
郷愁の詩人 与謝蕪村」より 著者:萩原朔太郎
昔かな 春雨や小磯《こいそ》の小貝ぬるるほど 行く春や逡巡《しゅんじゅん》として遅桜《おそざくら》 歩行歩行《ありきありき》もの思ふ春の行衛《ゆくえ》かな 菜の....
小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
く魔性の者じゃ。」 秀吉は空を睨んで突っ立っていると、そこに一本咲き乱れている遅桜の梢かと思わるるあたりで、彼を嘲るような笑い声がきこえた。 「羽柴筑前。早う....
紫外線」より 著者:小酒井不木
た自動車に乗って銀座をさして走らせました。通り過ぎる両側の家の庭に、ところどころ遅桜が美しく咲いて、うららかな午後の陽が静かに照りわたっておりました。 程なく....
山吹」より 著者:泉鏡花
ほかに村の人々、十四五人。 候 四月下旬のはじめ、午後。―― 場面。一方八重の遅桜、三本ばかり咲満ちたる中に、よろず屋の店見ゆ。鎖したる硝子戸に、綿、紙、反も....
父の墓」より 著者:岡本綺堂
低徊|去るに忍びず、墓門に立尽して見るともなしに見渡せば、其処ここに散のこる遅桜の青葉がくれに白きも寂しく、あなたの草原には野を焼く烟のかげ、おぼろおぼろに....
巷の声」より 著者:永井荷風
が如く、節序に従って去来するものは、今の世に在っても往々にして人の詩興を動かす。遅桜もまだ散り尽さぬ頃から聞えはじめる苗売の声の如き、人はまだ袷をもぬがぬ中早く....
車上の春光」より 著者:正岡子規
るがえって居るのはいさましい。 横町を見るとここにも鯉がひるがえって居る。まだ遅桜がきれいに咲いて居る。 何とかいう芝居小屋の前に来たら役者に贈った幟《のぼ....
大岡越前」より 著者:吉川英治
。 「旦那あ。こんだあ旦那の番ですぜ。どうです、おゆるしが出そうですか」 もう遅桜も褪せて、夏隣り。 釣舟も、猪牙舟も、屋形舟も、これから川へぞめき出る季節....