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遠音
「遠音〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
遠音の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
にも種物商や肥料商が入込んで、たった一軒の曖昧屋《ごけや》からは夜ごとに三味線の
遠音《とおね》が響くようになった。
仁右衛門は逞《たくま》しい馬に、磨《と》ぎ....
「映画時代」より 著者:寺田寅彦
俳句にはやはり実に巧みに「声の影法師」を取り入れた実例が多い。たとえば「鉄砲の
遠音《とおね》に曇る卯月《うづき》かな」というのがある。同じ鉄砲でもアメリカトー....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
ず、かかる処にこそ、影向して、露にな濡れそ、夜風に堪えよ、と母子の上に袖笠して、
遠音に観世ものの囃子の声を打聞かせたまうらんよ。 健在なれ、御身等、今若、牛若....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
しまって、そろそろと山鼻のほうへ歩いて行った。 足の下遠く黒い岩浜が見えて波の
遠音が響いて来る。 ただ一飛びだ。それで煩悶も疑惑もきれいさっぱり帳消しになる....
「『聖書』の権威」より 著者:有島武郎
活が開かれ始めねばなりません。こう云う所まで来て見ると聖書から嘗て得た感動は波の
遠音のように絶えず私の心耳を打って居ます。神学と伝説から切り放された救世の姿がお....
「春の潮」より 著者:伊藤左千夫
う。外には草を踏む音もせぬ。おとよはわが胸の動悸をまで聞きとめた。九十九里の波の
遠音は、こういう静かな夜にも、どうーどうーどうーどうーと多くの人の睡りをゆすりつ....
「黒髪」より 著者:近松秋江
れば、すぐ繁華な夜の賑わいの街に近いところのこととて、折々人の通り過ぎるどよみが
遠音にひびいてくる。しかし、そのためにひとしお静けさを増すかのように思われる。あ....
「連句雑俎」より 著者:寺田寅彦
「五十石取り」があり、ずっと離れて「四つのかね」と「三月」がある。その他『鉄砲の
遠音』の巻に「なまぬる一つ」と「碁いさかい二人」と続くような例ははなはだ多い。も....
「映画芸術」より 著者:寺田寅彦
が「灰汁桶のしずくやみけりきりぎりす」「芭蕉野分して盥に雨を聞く夜かな」「鉄砲の
遠音に曇る卯月かな」等枚挙すれば限りはない。 すべての雑音はその発音体を暗示す....
「不動像の行方」より 著者:田中貢太郎
聞えた。監物は耳をかたむけた。 とん、とん、とん、とん、…… それは陣太鼓の
遠音であった。 「彼の音が、彼の音が聞えるか」 監物は右の手をあげてその手の掌....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
のような足音、街路の聞き馴《な》れた叫声、陶器修理者のおどけた蘆笛《あしぶえ》の
遠音、舗石の上をたたいてる土工の金槌《かなづち》の音、噴水の気高い音楽――すべて....
「田園の幻」より 著者:豊島与志雄
などである。 私をかすめた死の影は力として薄らいでも宜しい。闇夜の太鼓の怪しい
遠音は再び蘇らないでも宜しい。投網の夜打ちの清爽な感覚は色褪せても宜しい。然し、....
「村芝居」より 著者:井上紅梅
、午後になるとわたしの友達は皆行ってしまった。芝居はもう開いているのだ。わたしは
遠音に囃を聞いて、「今頃は友達が舞台の下で、豆乳を買って食べてるな」と想った。 ....
「山吹」より 著者:泉鏡花
処に、静にポケット・ウイスキーを傾けつつあり。――鶯遠く音を入る。二三度鶏の声。
遠音に河鹿鳴く。しばらくして、立ちて、いささかものに驚ける状す。なお窺うよしして....
「かもめ」より 著者:神西清
とか、静かな星のまたたきだとか、しんとした匂やかな空気のなかに消えてゆくピアノの
遠音だとか……いや、こいつは堪らん。(間)そう、おれはだんだんわかりかけてきたが....