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「遣う〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

遣うの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
富士」より 著者:岡本かの子
をさし懸けられぬいわれはなかった。だが翁の心に於て、まず最初に、こどもの存否を気遣う疑念があった。懐疑、躊躇《ちゅうちょ》、不信、探りごころ――こういう寒雲の翳....
老妓抄」より 著者:岡本かの子
けだって考え剰《あま》っている筈の若い年頃の男が、年寄の女に向って年齢のことを気遣うのなども、もう皮肉に気持ちがこずんで来た証拠だね」 柚木は洞察の鋭さに舌を....
籠釣瓶」より 著者:岡本綺堂
七、八年前から身代《しんだい》も痛み切っていたところへ、去年も吉原で二千両ほども遣う。ことしもそれに輪をかけて三千両ほども撒き散らす。それじゃあとても堪《たま》....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
外聞というものを気にかけます。殊にそれが妾の一件だなぞと云うと、猶さら世間体を気遣うので、伊勢屋の主人もどうしていいか途方に暮れて、まあ黙って成り行きを窺ってい....
尹主事」より 著者:金史良
工事場で働いていた職人達ががやがや騷ぎ立てながらやって來た。主事は驚いて何かを氣遣うらしく私を傍の暗いアカシアの繁みの中へ急いで連れ込んだ。そして姿を隱し息を殺....
狂女」より 著者:秋田滋
とつ無かった。とは云うものの、時がたつにつれて、僕が心のなかで彼女の身のうえを気遣う気持もだんだんと薄らいで行った。 ところが、その年の秋のことである。山※を....
蜘蛛の夢」より 著者:岡本綺堂
遊び歩くという以上、どうで碌なことはしないに決まっているし、叔父さんは随分お金を遣うそうで、叔母さんは大変に心配しているんだよ。」 「どこへ遊びに行くんでしょう....
良夜」より 著者:饗庭篁村
送りたり。折返して今度は伯父よりの手紙に、学資を失いて活版職工となりしよし驚き気遣うところなり、さらに学資も送るべし、また幸いに我が西京に留学せし頃の旧知今はよ....
死剣と生縄」より 著者:江見水蔭
ぎょっとせずにはいられなかった。 交通不便の時代には、隔絶している人の安否を気遣うのが、今よりも深甚に迫るので有った。電信電話郵便の無い世の中では、自然に想像....
深川女房」より 著者:小栗風葉
ですね」 「ですがねえ。私なぞの考えで見ると、何も家をお持ちなさるからって、暮に遣う煤掃きの煤取りから、正月飾る鏡餅のお三方まで一度に買い調えなきゃならないとい....
式部小路」より 著者:泉鏡花
いわねばならんですよ。 じゃ何だ、医学士はざくざく注ぎ込む、お夏さんはばらばら遣う、しかも何一つ自分から欲いといったことはないのか。そうして一たびも枕をかわさ....
二階から」より 著者:岡本綺堂
でもすると顔の色を変えて平謝りに謝まった。 彼女は「だいなし」という詞を無暗に遣う癖があった。ややもすると「だいなしに暑い」とか、「だいなしに遅くなった」とか....
チベット旅行記」より 著者:河口慧海
るのでございます。ただそれだけの手続きを経るだけなれば非常に面倒ではあるが何も気遣うことはない。 ところがこのパーリー・ゾンからニャートンに到る間において、か....
空中征服」より 著者:賀川豊彦
懸ってもがいた。 彼は市長になるほどつまらぬことはないと思うた。ただ気だけ多く遣うて、人に悪口を言われて、勉強が出来なくって、役にも立たぬ古い古い法律をひねく....
大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
、危惧の念亦一層強く、たとえ十分信頼せる釣具にせよ、首尾よく挙げ得るや否やを、気遣うことも頻りなり。 引き寄せては引かれ、寄せては引かれ、数回くり返せども、敵....