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遣る瀬
「遣る瀬〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
遣る瀬の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「籠釣瓶」より 著者:岡本綺堂
た。さりとてこのまま宿屋へ帰る気にもなれなかった。彼はただ無暗に寂しかった。この
遣る瀬ない寂しさを打ち消すには、理屈も人情もない、なにか非常手段を取らなければな....
「玉藻の前」より 著者:岡本綺堂
ろびるのがむしろ自分の本望であったものをと、彼は膝に折り敷いた枯草を掻きむしって
遣る瀬もない悔恨の涙にむせんだ。その熱い涙の玉の光るのを、玉藻はじっと眺めていた....
「恐怖城」より 著者:佐左木俊郎
の心臓は酷《ひど》く痛んできていた。 「正勝ちゃん! 正勝ちゃん!」 紀久子は
遣る瀬なくなって、自分の心臓を引き毟るような気持ちの中で、さらにそう繰り返した。....
「押絵の奇蹟」より 著者:夢野久作
の、不思議な親切からしてくれたことかも知れない……というような果敢《はか》ない、
遣る瀬のない思いに胸をときめかせながら、いく度あなた様へ差上げるお手紙を書き直し....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
から」 三人に囲まれて、小柳は両国橋を渡った。彼女はときどきに肩をふるわせて、
遣る瀬ないように啜り泣きをしていた。 「金次がそんなに恋しいか」 「あい」 「お....
「源氏物語」より 著者:紫式部
けで、実質のこれほどすぐれた人とも認識しておいでにならないであろう。好色なお心を
遣る瀬ないものにして見せようと源氏が計ったことである。実子の姫君であったならこん....
「源氏物語」より 著者:紫式部
乗せて月夜の道を帰って行ったが、いつまでも第二回のおりの箏の音が耳についていて、
遣る瀬なく恋しかった。この人の妻は祖母の宮のお教えを受けていたといっても、まだよ....
「源氏物語」より 著者:紫式部
。どんなにまた煩悶をしておいでになる夜であろうなどと考えると苦しくなって、こんな
遣る瀬ない苦しみばかりをせねばならぬ恋というものをなぜおもしろいことに人は思うの....
「秋の歌」より 著者:寺田寅彦
ンの音になって、高く低く聞こえている。その音は、あらゆる人の世の言葉にも増して、
遣る瀬ない悲しみを現わしたものである。私がGの絃で話せば、マリアナはEの絃で答え....
「猫捨坂」より 著者:豊島与志雄
がりが、深夜になって囁くのだ。 「早く行け、早く行け。」 怪談ではない。悲しい
遣る瀬ない心の囁きなのだ。いずこかへ姿を消した行き倒れの女も、同様に囁く。 「早....
「方子と末起」より 著者:小栗虫太郎
起にも訪れるものが来た。童女期から、大人へ移ろうとする境界に立って、郷愁のような
遣る瀬なさ、あまい昏惑のなかでも、末起はときめくようなこともない。 春の曙光は....
「墓地展望亭」より 著者:久生十蘭
めかねた。じぶんの身体の中の一番大事な部分が、そのままそっくり抜きとられたような
遣る瀬なさを感じた。 竜太郎は、腹の底から怒りがこみ上げてきて、調子はずれな声....
「馬」より 著者:佐左木俊郎
ど即死であった。父親の伝平も母親のスゲノも、驚きだけが先に来て、涙も出なかった。
遣る瀬の無い悲しみの涙がじめじめと頬へ匐い出して来たのは、耕平が死んでから十日も....
「大ヴォローヂャと小ヴォローヂャ」より 著者:神西清
間も、あの人たちはじっと身動きもせずに立ちつづけているのだろう、と思うと堪らない
遣る瀬なさがこみ上げて来た。長い長い朝勤めがすむと、讃祷がそれに続き、それから弥....
「黒猫十三」より 著者:大倉燁子
。 彼女の空色の眼は、またいろいろな表情を現わした、訴えるような、悩ましげな、
遣る瀬なさそうな視線は、絶えず動いて彼の頭の中を容赦なく掻き乱した。その一挙一動....